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CoolandCool >> 写真とブログ講座 >> まだ終わらんよ >> 200204
 

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  ご挨拶。 2002/04/08(月)



どもどもこんばんわ。
かなりご無沙汰しております。
更新が滞りがちなダメダメ管理人の犬司です。

さてさて。
私の職場、というか工事現場が6月末竣工を控えて
かなり忙しくなってまいりました。
で、根性なしの私は当然のごとくへこたれ始めてます。

そこで、先手を打って謝っておきます。
更新ペースがかなり悪くなる予感です!!
6月ころまで!!

でも、決して閉鎖したり
充電期間なぞとこじゃれたことを言って
お茶を濁してみたり
そういう姑息な手段に出ることは絶対にありませんので
今後とも末永く
暖かい目で見守ってやってください。

とりあえず、今週中に必ず更新します。
内容の良し悪しはおいといて。

と言うわけで
あまり期待せずに、気長に
更新をお待ちしていてくださいまし。

ダメダメ管理人の犬司より。








(お手数ですが↓下に掲載されている前号からお読みください。)

次の瞬間。
ぴょん太はすでに跳ね起き、猛然と走り始めていた。
恐らく…
視界に飛びこんできた“なにか”を大脳が認識するよりも早く
体に染みついた“生存本能”がその危険を察知し
次の瞬間には、すでに全身が逃走行為に移っているのだ。
それは、およそ人間の想像を絶するほどの“反応速度”である。

……
走り始めて間もなく
ぴょん太は、その“危険”の正体を把握した。
『キツネ』だ。

全速力で走りながら
ごくわずかに首を右に向けただけで
草食動物特有の広い視界の片隅に
真後ろから猛然と追いかけてくる“なにか”の姿が見て取れる。
無論、草食動物の目には、動くものを詳細に捕らえる視力は無い。
漠然と、黄色の塊に見えるだけだ。
しかし、ぴょん太にはそれだけで十分であった。
“黄色いなにかが追ってくる”ということさえ分かれば
あとは、彼の長くて優秀な“耳”が
後ろか来る追跡者の正体を全て分析してくれる。
その足音、息遣いを聞けば
ぴょん太には全てが分かるのだ。
間違いなく、キツネだ。

ぴょん太は、逃げる。
キツネは森の中でも、極めて優秀なハンターであることを
もちろんぴょん太は知っている。
そして、後ろから追ってくるキツネのトップスピードが
恐らく自分よりもわずかに速いだろうということも…。



草原を見晴らす小高い丘の上
その木立の中で、二匹の追跡劇が始まる。
逃げるものと、追うものと。
それは圧倒的なスピードと瞬発力のぶつかり合いとなる。
ウサギはその“速さ”で、あらゆる追跡を振り切り
今日まで生きてきた。
一方、キツネもまた、その“速さ”ゆえに
今日まで餓死することなく、獲物をとりつづけることができたのだ。
互いの命を“足”にのせて
命を賭した“かけっこ”が展開される。

………
キツネは、肉食動物特有の狭い視界の中央に
逃げるぴょん太の姿を捉えていた。
その、恐るべき動体視力を備えた目には
ぴょん太の蹴り上げる後ろ足の動きが
驚くほどの正確さで映し出されていた。
短い尾っぽの動きも、風に踊る耳の動きも
蹴り上げられる土ぼこりの一粒々々までも…
そして。
徐々に、徐々にではあるが
目の前をゆくウサギの姿が大きくなる。
差が、縮まっているのだ。
「やはり、俺のほうが…速い」
キツネは、自分の速さを確信した。
しかし、天性のハンターである彼は
決してうかつにはしかけない。
そのままのペースで、徐々に、徐々に追い詰めていく。
彼が最後のジャンプで獲物に飛びつくには
「ここぞ!」という、絶妙なタイミングと間合いとがあるのだ。
それは、たとえ逃げるウサギより自分の方が速かったとしても
そのタイミングは、ほんの一瞬のことであり
あるいは1秒の数分の一という瞬間のできごとである。
その一瞬のチャンスをものに出きるかどうかが
つまるところ、キツネの“速さ”なのだ。
だからこそ、キツネは
決してうかつにはしかけず
少しづつ、少しづつ、相手を追い詰めていくのだ。
逃げるウサギの挙動を、正確に読み取りつつ
最後のジャンプをしかける
ほんの数分の一秒のタイミング計りながら…。
自分の動きを、ウサギの挙動に同調させながら…。


一方、逃げるぴょん太はというと。
彼もまた、恐るべき冷静さで状況を把握していた。
草食動物達は、確かに警戒心が強く、繊細な生き物かもしれない。
しかし、決して臆病ではないのだ。
今まさに自分を食い殺そうとするハンターに追われながら
しかもそのハンターが自分よりも速いことを認識しながらも
それでも、彼の頭の中では
そのハンターから逃げ切るための方程式が
恐るべき冷静さと、恐るべき緻密さをもって
組み立てられていたのだ。
その証拠に…
ぴょん太は、意図的に己のトップスピードを封印し
キツネに追いつかれるがままにさせていたのだ。


二匹の距離、およそ5メートル。

4メートル。

3メートル50。

……
キツネの目測は、精緻を極める。
一歩ごとに、逃げるウサギとの距離を詰める。

あと、2メートル。

……
ぴょん太の聴覚もまた
同じ数値をはじき出していた。

あと、1メートル50。

……
一瞬のタイミングを計るキツネの目は
まさに『虎視眈々』と呼ぶにふさわしい。
決してあせらず
精密機械のごとく相手との距離を見つめる。

あと、1メートル

「もう少し。あと、少し。」

あと、75センチ

「まだ、まだだ…。」

あと、50センチ

「……」

あと、35センチ

「…!」

あと…

「よし!今だ!」
……ダンッ!!!


狙い済ましたタイミングで
獲物をめがけ、キツネは一足飛びに跳躍する。
「よし、もらった!」

そして、それと同時に
ぴょん太もまた、確信した。
「よし、もらった!」


刹那、ぴょん太めがけて一直線に飛行するキツネの視界から
ぴょん太が、消えた。
いや、消えたのではない。
タイミングを狙い済ましていたのは、むしろぴょん太だったのだ。
キツネが最後のダイビングで宙に舞った瞬間
ぴょん太は、90度右へ急旋回したのだ。

無論、その急旋回ですら
キツネの動体視力は問答無用で把握する。
しかし。
しかし、である。
その急旋回は、決して目くらましなどではないのだ。
………

ぴょん太の狙いは、“速さ”ではなく、“軽さ”にあったのだ。
その身軽な体重を
全体重の半分近くを占める後ろ足のひと蹴りで
あっさりと急旋回をやってのける。
一方、キツネは、ウサギのかるく3倍はある体重をもてあまし
四足をフル稼働させつつ急旋回を試みる。
しかし、大地を蹴る足は
強力な慣性エネルギーを前に悲鳴をあげずるずる滑り
大きく弧を描いて旋回する。
呼吸は乱れ、足並みももつれる。
ようやく態勢を立て直し、追撃を再開するまで
3.5秒の時間が経過した。
その、わずか3.5秒が、勝敗を分けた。
ぴょん太は一瞬で急旋回をおえると
次の瞬間にはすでに、封印していたトップスピードを開放し
全速力で逃走に移っていた。
その姿、まさに『脱兎のごとく』……
彼のトップスピードは
たった3.5秒の時間で命をつなぎとめるだけのスピードを
充分に持っていたのだ。
3.5秒の時間を稼ぎ
その3.5秒で一気に逃げ切る。

ウサギの持つ“速さ”とは、つまるところこれなのだ。

わずかに追いかけた後
キツネは、自分の敗北をさとり
静かに、追うのをあきらめた。



あれから、どれくらいの時間が経過したのだろうか。
ぴょん太は、再びもとの小高い丘に戻ってきた。
キツネの存在を、充分に警戒しながら。
そして、ふと、ふもとの草原を見下ろすと
先ほどとあまり変わらない位置を
変わらぬひたむきさで
亀がよちよちと歩いていた。
……
いや、一応、走っていると言うべきか…。


しかし、今のぴょん太の目には
亀の“速さ”が映っていた。


亀は、あの草原のど真ん中を
何十分も、あるいは何時間もかけて
歩きつづけてきたのだ。
その姿を見たのは、キツネやイタチだけでなく
鷹もワシも狼も山犬も
みんなみんな亀を見ていたのだ。
しかし、誰一人として
亀に牙を、くちばしを向けるものはいなかった…。
もしもウサギの自分が、ひとたびキツネに見つかったなら
まさに自分の命を囮にまでして
わずか3.5秒という時間をかせぎだし
その、たった3.5秒で命を食いつなぐというのに…。

つまり。
片や亀は、その固い甲羅ゆえに
あらゆるけもの達相手にほとんど無限の時間を稼ぎ出し
よちよち歩きで逃げおおせる。
片やウサギは、その俊足をもってしても
キツネ相手にわずか3.5秒という刹那の時間しか
稼ぎ出すことができないのだ。

だからこそ、ぴょん太は思う。
亀の、固い甲羅に覆われたよちよち歩きは
それは自分よりも、圧倒的に“速い”のだと。
そして、さらに言うなら
圧倒的に“速く”かつ“固い”甲羅に守られているからこそ
亀は、自分のよちよち歩きに劣等感を抱き
ウサギのぴょんぴょん走りをねたむことが許されるのだ。

恐らく亀は、自分の“速さ”には、気づいていないだろう。
彼はぴょん太のおじいさんのおじいさんの頃から
よちよち歩きで草原を横切っていただろうし
ぴょん太の孫の孫の代まで
同じくよちよち歩きを続けるだろう。
ウサギに数倍する寿命を全うするまで…。

ぴょん太は、初めて、亀に対して劣等感を抱いた。
心底、亀は“速い”と思った。
しかし、口に出しては、こう、つぶやいた。

「それでもね、亀さん。
 ボクは…ボクはやっぱり速いんだ。
 ボクは刹那の時間のやり取りに生き
 やがて、死ぬかもしれない。
 でも、その刹那のやり取りが、ボクの生きる証なんだ。
 たった3.5秒を、君は笑うかもしれない。
 でも、それは君が何十年もの寿命の中で
 決して得ることのできない3.5秒なんだ。
 何十年という時間が、君の命なら
 わずか3.5秒という時間は
 間違いなく、ボクの命なのだから。
 ……
 だからね、亀さん。
 ボクはもう、二度と君とはかけっこしないよ。
 なぜなら
 僕達のもつ“速さ”も“時間”も
 それは全く別の世界の出来事なのだから。」

ちょっと悲しげな、ちょっとうらやましげな瞳をみせて
しかし、ぴょん太は二度と振りかえることなく
すみかへと帰っていった……。


        完






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