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CoolandCool >> 写真とブログ講座 >> まだ終わらんよ >> 200212
 

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  年の瀬 2002/12/30(月)



さてさて。
いよいよ年の瀬も押し迫ってまいりましたが
皆様いかがおすごしでしょうか?
好きなように過ごしてください。
興味ないので…。

さすがに師走などと申しますように
ご近所でもあらゆるお師匠さんが突っ走っております。
あれですよ。
ついさっきも、ほら、あそこの三丁目の角で
書道のお師匠さんが交差点を真一文字に突っ走ってきたら
反対側から来た社交ダンスの先生が華麗なステップで右折してきて
真正面からガッシャーン!!
小粋に咥えてたバラの花も根元からポッキリ。
自慢のすずりも粉々で、あたり一面、墨汁まみれでした。
ふたりとも頭にでっかいコブつくって
「いくら弘法でも筆にあやまれ!」
「お前こそシャル・ウィ・ダンス?」
とか口走って大喧嘩ですよ。小走りのまま。
するとここぞとばかりにご近所の警察OBが
腕に「教務官」とか腕章つけて突っ走ってきて
小走りのまま現場検証。
「いいか!現場検証ってぇものはこうやるんだ!」
とか、しきりと若い警官に教えてるんです。小走りで。
するともう、当然の流れとでもいうように
「ピーポーピーポー」
とか叫びながら大学病院の先生まで突っ走ってきて
小走りのまま診察をはじめるわけです。
「軽い打撲傷。骨には異常なし。瞳孔反応良。
 念のため脳波とCTだけ撮っておこうか。
 それと田中君!採血も頼むね。」
とか言い残して、さっそうと走り去ってしまったため
現在、助手の田中君の採血待ちで
全員小走りのまま現場待機です…。

あれですね。
田中君は助手だから走らなくていいんですよ。
だからむちゃくちゃ遅い。
なかなか来ないんですよ。もう寒くて寒くて。

いくら年末だからって
師匠ばっかり走りまわるこのルール
やっぱり良くないですね。
事故とか増えるし。
来年からは『師走』ではなく
『師やや早歩き』くらいで十分ではないかと思います。
“いつも7分かかるところを5分でいく”
くらいのスピードで、許してあげましょうよ。
ね、彼らお師匠さんたちも必死なんですよ。
「俺だって、まだ、イケル!まだまだ現役!」って
教え子達にいいとこみせようと必死なんですよ。
「どうだ?ヒヨッ子ども。早いだろ?俺、まだイケルだろ?」
この12月の走りひとつに
己の威厳とか存在価値とか、全てのっけているわけです。

そう言った意味で、今年一番つらい師走は
なんといっても小出監督。
彼はつらいです。
年がら年中、教え子のキューちゃん(高橋直子)を
あっちで走らせこっちで走らせしながら
自分は気楽にチャリンコか車で激を飛ばす。
こうしてオリンピックが過ぎベルリンマラソンも終えて
あらかた金メダルを総なめにしたところで
「で?小出って…ちっとは早いわけ?」
さすがのキューちゃんも
ものすごく根本的な疑問にぶつかっちゃうわけです。
そしたら小出監督。
それはもう、鬼走りですよ。
鬼畜のごとく走りますよ。
(注:正しくは“鬼神のごとく”です。)
ブヒブヒ言いながら走ります。
(注:それは“家畜”です。)

♪たらちねの 小出も走る 師走かな

季語は「小出」。春の句です。



というわけで、ものすごく大変なんですよ。
『師走』って…。
すごく一生懸命で、命がけで、ひたむきで…
それでいて交通事故とか危なくて…
というよりむしろ近所迷惑で…
結局誰も見てないし…

さて。
要するに結論はというと
『師走』は、今年をもちまして廃止です。
来年からは
『師やや早歩き』程度にとどめる。
なお
『師夢見がちに小走り』
『師はにかみにながらスキップ』
なども可。
状況に応じて適宜使い分けるということで
いいんではないでしょうか。
それと
『師匠でない人も必要に応じて走る』
というルールも付け加えておく必要があると思います。
走るべき人は、ちゃんと走らないとね。

助手の田中君!はやく走ってきなさい!
小走りのまま現場にたたずむ犬司でした。
皆様、良いお年を。





  トナカイ 2002/12/26(木)



こんばんわぁぁぁ!!いやっほう〜ぃ!
♪走れソリよ〜 丘の上は 雪も白く 鼻も赤く〜
真っ赤なお鼻のトナカイ君だYO!
こんばんワン♪
トナトナ、トナトナ。(←トナカイの鳴き声)
お鼻、赤いYO!。
ま、それにしてもあれだね
メリクマ〜!メリクマ〜!ウキャッ♪
もうむちゃくちゃメリクマ!めりぃくりすまぁす♪
トナカイ君はとってもノリノリだYO!
といってもソリに乗るのはサンタじいさんの方だけどね。
サンタじい、ノリノリ〜。
トナカイ君は、ヒキヒキ〜。
さぁ〜て、そいじゃ毎年恒例のプレゼント配り
はりきって参りましょうかぁ!!
今年も、引くぞぉぉぉ!!!
ソリ。


えっ?遅い?
なにそれ。
………
えっ?昨日!
まぢ。まぢそれ。


やっべぇぇぇ!!!
寝過ごしたぁぁぁぁ!!!!
うわっ、ど、どうしよう…。どうしよう…。
ウロウロ。オロオロ。トナトナ。
だってさ。だってさ。
ほら、僕ってさ昨日まで冬眠してたから…。

するよ。もちろん。
だって冬だもん。ちゃんと眠らなくちゃね。
動物らしくね。いわば冬のたしなみだよね。
ほら。雪山とか行くじゃない。
そしたら、ちっちゃい枯れ木とか、よく見かけるでしょ。
たいていそれ、角ね。僕らの。
根っこの方の雪を掻き分けるとさ
居眠り中のトナカイさんを発掘できるよ。
「あっ、でっかりトナカイ掘れた!」
とか、喜ぶとイイね。芋掘りみたくね。
田舎のほうだと、じいさんが
「ばぁさん。オラ、トナカイさ掘りに行ってくるから…」
とかいって山に登っていったきり
二、三日帰ってこないことはざらだね。
そのまま二度と帰らぬ人になるのもざらだよね。
「トナカイ掘りがミイラになる」
ってことわざ、結構有名だよね。

ま、それはさておき…
まずい。
まっずいよなぁ…。どうしよう。
まさか寝過ごすとは。
全国のチビっこが僕のプレゼントを待っていたのに…。
正確にはサンタじいさんのプレゼントだけど…。
あっ、そだ。
あれだよ、あれ。
『年賀』ってことにしようよ。
「今年もヨロシク」とか言いながら近所にくばるの。
寿とかかいて。エビもつけて。
ね。ね。そうしよ。サンタじいさん♪

………って
しっ!死んでるぅぅぅぅぅ!!!!

ねぇ、サンタさん!サンタさん!しっかりして!
うわぁ〜どうしよ、やっぱ死んでるよ。
どうりで、今年は起こしてくれなかったわけだ。
なぁんだ。そうか、そうか。
納得。

してる場合ぢゃなくて、どうしよう!!
とりあえず、お巡りさんに電話だ。
えぇと…おまわりさん、おまわりさん…
お…お…
緒方さん…小沢さん…小渕さん…小俣さん…
あった、お巡りさん!

♪ピポパポ トゥルルルル…トゥルルル…カチャ

あっ、もしもし、お巡りさん?
あのね。あのですね。
実は…
僕んちでおじいちゃんが死んでるんです。
あっ、おじいちゃんのウチね。正確には。
でもさっき死んだから、多分相続とかで…今は僕んち。
そう、じいちゃん身よりないから。
えっ?僕?
僕はやってないよ。
やだなぁ、お巡りさん。僕じゃないよ。
だって僕、ずっと冬眠してたから。

えっ?アリバイ?
ないよ。だって、冬眠は一人でするから。
人目につかないところで。
だって人に見つかるようなところで冬眠してたら
僕が食われて死んじゃうじゃん。ねぇ。

おじいちゃんの死体はどうかって?
う〜ん…
詳しいことは死んでみないと分からないけど…
よく死んでるよ。すこやかに。
あれだね。きっといい死体だよ。

えっ?どんな状態かって?
あぁ、そういうこと。
ソリのそばでね、プレゼントの山に突っ伏して死んでるよ。

えっ?交通事故?
それはないなぁ…
そういうことじゃないよ。
ソリに跳ねられたんじゃないんだ。ソリ、止まってるし。
そうそう。
そのソリ、僕が引っ張らないと動かないから。
で、その時間、僕寝てたしね。冬眠。

変死?…そうだね。言われてみれば。
真っ赤な服着てプレゼントの山に突っ込んでるから
一般的なおじいちゃんの死に方じゃないよね。
変な死に方だね。変死。
僕はこういう死にかたはやだよね。
赤い服着て死ぬのはね。ちょっとあれだよね。
葬式とか遺影とかで、言い訳きかないよね。

えっ?司法解剖?
するの?…あ、そう。
変死だからね。そうだね。変だもんね。赤いし。
えっ?費用こっち持ちでやるの?僕が?
ちょっとまってよ、お巡りさん。なにそれ。僕がやるの?
捜査は?現場検証とかは?
………
えっ?年末は忙しいからダメ?
なんだよそれ。ダメじゃないでしょ。仕事だし。
………
わかったよ、それじゃプレゼントつけるよ。
そう、プレゼントだよ。プレゼント。
昨日渡し忘れたから、在庫どっさり余ってる。
えっ?それじゃみんなで来る?
捜査本部設置?本庁からもみんなで来る?
ちょっとまってよ。
さすがにそんな大げさにしなくても…

どうせ老衰だし。

ガチャッ ツーツーツー

あっ、ひでぇ!
切りやがんの、電話。
老衰って言っただけなのに…
あれだよね。日本の警察も最近だめだよね。
相手が老衰死だと手も足も出ないんだから。
しょうがないなぁ。
それじゃ、あれだね。
火葬場だね。火葬場に電話しよ。
焼くしかないよね。こんがりと。

♪ピポパポ トゥルルルル…トゥルルル…カチャ

あっ、もしもし。
あのですね。
死んだおじいちゃんをこんがり焼いてほしいんですけど…
えっ?年内はいそがしい?
あんたもお巡りさんとおんなじこというね。
そこを何とかたのみたいんですよ。
もう死んじゃってるから。ね。
焼かないと。早いうちに。

えっ?何とか持ちこたえてくれ?
だめだよ!
もう、死んじゃってるもん!
持ちこたえるとかどうとか、そう言うレベル超えてるの!

えっ?家で焼けないかって?
無理!それはむりでしょう!
魚じゃあるまいし…

えっ?暖炉?
ありますよ。それくらい。
煙突だってね、ちゃんとありますよ。
だけどね。煙突からは出入りませんよ。さすがに。
煙突から入るのは他所のおうちだけ。
自宅にはね。さすがに玄関から入るよ。
遠慮することないから。

えっ?その暖炉で焼けって?
ウチの暖炉で?おじいさんを?
ちょっと待ってよ。だってさ…

えっ?費用はそっちもち?
………
それなら、なんかスジが通ってるよ。
お巡りさんとは大違いだね。
費用は火葬場が負担。
そして火葬場の代わりに僕が自宅で焼く…。
わるくない。
それはわるくないアイデアだね。
よしっ!決めた!
僕、焼くよ。
焼きあがったら電話するから
ちゃんとお金はらってよね。
それじゃ、…♪ガチャ ツーツーツー

さて、というわけで
来年の年賀には、サンタさんの遺骨をつけて
みんなのもとにプレゼントを届けるからね〜。
楽しみに待っててねぇ〜
ばいばいぁい




  ガンバレ!松井君 2002/12/23(月)



どうもこんばんわ。久方ぶりの『犬司』です。
本日は、12月23日。
なんでも今日は、天皇陛下のお誕生日なんだそうです。
みなさん、知ってましたか?
地方によっては休日になったりするそうです。
もちろん私は仕事でしたけど…。

えっ?3連休?
地方によってはそういう“おおげさな”風習が
残っているところもあるそうですね。
もちろん私はずっと仕事でしたけど…。

さてさて。なにはともあれ
何十年か前の今日、今の天皇陛下は生まれたのです。
そうですねぇ…1930年代といったところでしょうか。
1930年代というと…分かりやすく言えば
応仁の乱から数えて、まだまだ460年足らずの、あの頃です。
ほら、あの頃を振り返ってみると
徳川家康ががんばったりがんばらなかったり
ペリーが来たり来なかったり
文明が開花したりしなかったり
日本対ロシア戦で勝ったり勝たなかったりなどなど
ちょっとした出来事がいろいろあったじゃないですか。
でも、全体的にみて応仁の乱後の復興ムードに乗じて
それじゃ、ぼちぼち
パールハーバーで思い出作りでもしましょうか?
って感じの時代だったと思います。
あぁ、たそがれの、リメンバー パールハーバー。
(真珠湾…あの夏の思ひ出を忘れないでね)

まぁ、そういうわけで
数十年前の今日、天皇陛下が生まれたわけですが
だからといって、どうってことないですね。
だって、1年365日
誰かの誕生日でない日はありえないわけですから。
それを言うなら
むしろ28年前の5月31日に私が生まれていることのほうが
ずっとすごいと思います。
なんていうかすっごく、あれだと思います。
素敵っぽいです。

ちなみに、2002年も昔の12月25日に
欧米では広く信仰されている、とある宗教上の指導者
キリストさんとういう方が生まれたのだそうですが
だからどうしたというのでしょうか?
みんな、何をそんなに浮かれ騒いでいるのでしょうか?
たかが生まれたくらいで…。
それを言うなら
12月25日生まれのイスラム教徒だっているだろうし
12月25日生まれの坊さんだっていると思います。
12月25日生まれは、なにもキリストさんだけじゃありません。
それなのに、前日の夜からハッスルハッスルだなんて
どうも浮かれすぎのような気がします。
みんなハッスルしすぎです。
たまにはぼくも、まぜてください。(哀願)


えぇ、そういうわけで
だいぶ前振りが長くなりましたが
ぼちぼち本日のテーマにいってもいいでしょうか?
(注:早くいけよ)


今日のテーマは“松井”です。


先ごろ、日本プロ野球界が誇る4番バッター、松井秀喜君が
本場アメリカはニューヨークに渡り
ヤンキーになってしまいました。
ちなみに偶然ですが
松井君も私と同じで、28年前に生まれたのですが
だからどうということはありません。
それにしても…
これまでずっと、野球一筋、真面目に打ち込んできた松井君が
なんで28歳にもなって
いまさら不良になってしまったのでしょうか?
なぜ、野球を捨てて、ヤンキー風情になってしまったのでしょうか?

わが身を振りかえってみて
私がこの年でヤンキーになれるかといえば…
やはり非常に難しい。
いくら私にだって、それなりに守るべき生活があるし
社会的な評価も気になるし
第一、すごくみっともない。
この年でヤンキーになるというのは
ものすごく勇気がいることだと思います。

もちろん、28歳でヤンキーデビューというレアケースも
可能性としては考えられる。
例えば…
眉毛の形を整えようとする
→右マユだけちょっと短くなる
→左マユを少し剃って微調整→失敗→右で微調整→失敗
→結局マユ全損
→プチヤンキーへ
といった場合は、考えられると思います。
しかし、それでも、プチヤンキーどまりです。
本場のヤンキーにはなれません。

そもそも、私も今回の松井君の一件ではじめて知ったのですが
本場のヤンキーというのは
ニューヨークヤンキーのことを言うのですね。
ニューヨーク…。
私の中で、ニューヨークのイメージはというと
やはり高層ビルが立ち並ぶコンクリートジャングルの中を
メガネで七三のインテリスーツが
革靴をカツカツ言わせながら往来するイメージだったのですが
まさか、ヤンキーのメッカだったとは…。
きっとマディソンスクエアガーデンの前とかでウンコ座りしながら
女とパイクの話しで盛り上がって
そのあと、ウォール街で検問突破とかするんだと思います。
「NYダウぶっちぎるぜ!」とか
「対ユーロ、ドル安上等、ヨロシク!」とか叫びながら
突破するんだと思います。
すっごくニューヨークです。さすがは本場ヤンキー。

僕らの松井君も
そんなアメリカナイズされたヤンキーに憧れて
日本を捨ててアメリカに行くのだと思います。

でもね。
きっと彼の心の中には
もっともっと、深い葛藤があったのだと思います。
それは…
例えば彼の“あだ名”のせいではないかと思うのです。

ゴジラ松井

ひとは松井君のことを、親しみを込めて“ゴジラ”と呼びます。
それは
「人並みはずれたパワーを秘めているから」とか
「ピンチの時に必ず助けてくれるヒーローだから」とか
そう言う理由で、ゴジラ呼ばわりするのです。

しかし、それはあくまで、表向きの理由。
そして我らが松井君は
そんなみんなの“偽りの笑顔”の下に隠されている
“真実”を知っていたのです。

「すごく顔がブツブツだから…(半笑い)」

結局ブツブツなのです。
人並みはずれてブツブツな松井君の顔が
ひとをしてゴジラと呼ばしめるのです。
何割打とうと、何打点あげようと、どれほど本塁打を打とうと
結局ゴジラはブツブツなのです。
ブツブツだからこそゴジラなのです。

これはむしろ“いじめ”だと思います。
あるいは“セクハラ”でもいいです。
“人種差別”とはちょっと違うかもしれません。
しかし「肌の色」を指摘するのが人種差別なら
「肌の凹凸」を指摘するのも、やはり人種差別かもしれません。

いずれにせよ
このような酷い仕打ちにあって
僕らの松井君は、グレて、不良になったわけです。
あぁ、かわいそうに…

ここの読者の中にも
松井君のファンはいると思います。
松井君は、きっと“お肌つるつるっぽいあだ名”で呼ばれることを
待っていると思います。
みんなの、あたたかい一言を待っていると思います。
今は、すっかり傷つき、グレて、ツッパっていますが
本当はナイーブで純情な男の子なのです。
ファンのみんなが
もっと“お肌つるつるっぽいあだ名”でちゃんと呼んであげれば
きっと僕らの松井君は
ヤンキーをやめて、ちゃんと更正してくれると思います。
ちゃんとつるつるお肌になって、日本に帰ってくると思います。
すっぴんで帰ってくると思います。

というわけで
みんな大好きな松井、永遠のヒーロー僕らの松井が
日本に帰ってきてくれるその日まで
私は決して、松井をゴジラ呼ばわりするのはやめようと思います。
むしろ、もっとツルツルっぽく…そう、例えば…

ハゲ松井

とかで、いいと思います。
再来年、松井がメジャーから、ふたたび日本に戻ってくるとき
成田空港にすっぴんで降り立つところを
スタンディングオベーションで出迎えてあげたいと思います。

いいぞぉ!ハゲ!
ナイスハゲ!
ハゲてるぞ!ツルツルだぞ!いいぞぉ!ハゲ松井!


あるいは感極まった松井君に
こめかみあたりを金属バットでジャストミートされるかもしれません。
でも、そんな熱いハートと雄雄しきスピリットを持った松井君の雄姿を
もう一度日本のグランドで、見たいなぁと思います。


最後になりましたが
松井君がニューヨークのヤンキー風情になってしまって
心から残念でなりませんが
どういうわけかニューヨークのヤンキーは
3年間で24億円という破格の収入がえられるようなので
それはそれで頑張って不良をすればいいと思います。
いいなぁ、ヤンキー。
やっぱ、本場は儲かるんですね。

3年後、本場ヤンキーの契約が終了したら
きっと日本に戻ってきて、ちゃんと立派に更正して
社会復帰してくれることを祈っております。

頑張れ!松井!
きみはもう、ブツブツじゃない。
「巨人打線はツブぞろい」なんて言わせない。
ぴっちぴっちのツルツル美肌になって、戻ってくるがいい。
すごく綺麗になって
ゴジラ呼ばわりしたみんなをみ返してやればいいのだ。









(さてさて。申し訳ありません。ダラダラと第五部です。
 初めて見にこられた方はお手数ですが第一部からお読みください。
 もしくは見なかったことにして下さい。)

『それにしても、あれだな。
 これほど見事に無視されるとは思わなかったな。』

「そうだね…。
 嫌がられたり怖がられたりするのは
 ある程度想像できたんだけど…
 この子ときたら、僕らに全く興味ないもんねぇ。」

『全くだ。
 だいたい、小学生の時分に昆虫を見て興奮しないようなヤツが
 将来立派な大人になれると思うか?えぇ?
 このガキときたら俺達の方なんて見向きもしないで
 「変な虫がいてウザイ」だってやんの。ケッ。
 お前のほうだよ!変なガキは!』

「に、兄さん。落ち着いて。どうせ言葉通じないんだし。」

『だったらなおさら言いたい放題じゃねぇか。えぇ?
 だってそうだろ。
 子供ってもんはさ、普通、もっと…こう…
 すごく自然に「いやぁんもう、昆虫♪」って感じだろ。
 それがさ。今日びの子供達ときたら
 「昆虫?…だから?」って感じじゃん。
 そのくせ俺達が理科の試験問題にでも出題されてごらんよ。
 やつら血相変えて興味を示すぜ。
 「必勝」とか書いた恥ずかしいハチマキ締めて。
 それでちょっと問題解けたくらいで
 「ボク、昆虫関係は無難にマスターしてるから(半笑い)」
 とかぬかしやがんの!あぁムカつく!!
 ほんと日本の学校教育は何をやっとるのかと!
 それで教育と呼べるのかと!』

「兄さん!頼むから落ち着いてよ!ね。
 とりあえず日本の学校教育よりも
 僕達の越冬問題の方が、今は重要だから。」


“ねぇ、ママ!変な虫がまだいるよ!なんとかしてよ。”


『上等だ、テメェこのやろう!おもて出ろ!こんちきしょう!
 こってんぱんの、ぎっとんぎっとんにしてやる!』

「兄さん、落ち着いて、無理だから…ね。」


“(ママ登場)
 マー君が窓を開けっぱなしにしたからいけないんでしょ。
 自分でなんとかしなさい!”


『おっ!かぁちゃんよくぞ言った。褒めて取らすぞ。
 や〜い、少年。ママに怒られてやんの。
 ざま〜みろ!おし〜り、ペンペン。』

「兄さん、落ち着いて、みっとも無いから…」



“違うもん!さっき窓開けたのママだもん!
 洗濯物干すときに。ママが開けたんだもん!”

“そ…そうよ。開けたのはママよ。
 だって、開けなければ洗濯物が干せないじゃない!
 でも、ママはちゃんと洗濯物干したりしてお仕事したんだから
 窓を閉めるのはマー君の仕事なんだからね!”

“そ…そんなの、ママ、ずるいよ!”

“いいの!ずるくないの!ママは、今、そう決めました。
 窓を閉めるのは、マー君の役目なの。
 だから「窓を閉め忘れた」マー君が
 そこの気色悪い変な虫を早く外に追い出してください!”

“ヤダヨ〜!ずるいよ〜。虫、気持ち悪いよ〜。”



『………
 あれだな。とりあえず…
 相当やっかいなかぁちゃんだな。』

「そうだね。この母親も…かなりみっともないね。」



“あら?マー君。
 ねぇ、この虫…これ、ひょっとして…バッタじゃない?”

“バッタ?”

“そうよ!マー君。これ、バッタよ。
 きっと、これ、イナゴ!ね。イナゴに決定♪
 捕まえて、つくだ煮にしましょう♪ね。”

“ウン♪ボク、イナゴのつくだ煮大好き♪”



『おい、こら。ちょっと待て。
 勝手に決定するなよ。何様だよお前は。誰がイナゴだよ!
 な、ちょっと落ち着けよ。頼むから。
 あ、あれだ、ギリス。
 オレ達がキリギリスだってところを見せてやれ。』

「ど、どうすればいいの?昆虫図鑑でも持ってくるの?」

『落ち着けよ、お前も。
 そんなものもってこれるわけないだろ!
 鳴くんだよ!鳴くの!』

「あっ、そか。うん。分かった。」



♪リリリリ〜ン  リリリ〜ン

“あっ、ママ、電話だ。”

“あら、ほんと。電話だわ。…あっ、パパからかしら?”

♪リリリリ〜ン  リリリ〜ン



『なぁ…。
 お前ら、わざとやってるだろ。それ。
 どう見てもおかしいだろ。むしろオレ達にケンカ売ってるだろ!
 ………
 お前もいつまでも鳴いてるんじゃない!』

「あっ、なんだ。もう、いいの。」



“あら?…切れちゃった。
 ママ、もたもたしてたから、電話が切れちゃったわ。どうしよう。
 やっぱり、パパからだったかなぁ?ねぇ、マー君。”

“いや…。そうじゃなくて…。
 あのさぁ。ひょっとしたら
 今の電話。この虫たちだったんじゃない?”



『おぉ!よくぞ気づいた、少年よ。
 君はうんざりするほど良く気がつく少年だな。』



“えっ?…この虫たちが?…さっきの電話?”


“うん。多分…そうだと思う。” 

“マー君!
 知らない昆虫にウチの電話番号を教えてはいけませんって
 何回ゆったら分かるの!”

“ち、違うよ!僕、昆虫に電話番号なんて教えてないよ!
 それに、ママ、そんなこと一度もゆったことないよ!”

“いいえ、言いました。
 ママ、ちゃんと昨日言いました。
 ちゃんとゆったんだもんねぇ〜だ。”

“ず、ずるいよ!ママ、ゆってないよ!”

“いいえ、ちゃんと言いました。
 マー君が忘れてるだけですぅ〜。
 忘れんぼマー君がいけないんですぅ〜。”



『なんか…あれだな。
 やっかいどころの騒ぎではないな。このかぁちゃんは。』

「そうだね。さすがに、みっともないどころの騒ぎじゃないね。
 でもさ、あれだね。
 このかぁちゃん、なんだか兄さんとキャラかぶってるよね。」

『お…俺と?
 ちょっと待ってくれよ。
 いくら俺でも、このかぁちゃんほどひどくはないだろ。
 なぁ、俺のがずっとマシだろ?
 そんなこと言ってるとお前…あれだぞ。
 また、凹むぞ。凹んじゃうぞ。
 むしろくぼむぞ。部分的に…。
 いや、さらに通り越して、沈没するぞ。俺全体が。
 ずぅっと沈むぞ。ぐんぐん、沈んでいくぞ。
 モロッコあたりまで…。(注:およそ地球の裏側です。)
 そのせいで、モロッコがでっぱるぞ。モッコリと。
 モッコリモロッコだぞ。10回連続で言ってみるか?』

「やめてくれよ。みっともないから。
 だいたい、なにがモッコリモロッコだよ。
 本気で10回繰り返していうヤツとか出てくるんだから気をつけてよ。
 本気で言うぞ。ここの読者は。
 読者ぐるみですごくみっともないことになるんだから…。」



“そ、そうじゃなくてさ。ママ。
 この虫たちがウチに電話かけたんじゃなくて
 この虫たちが電話の音を鳴らしてたんだよ!
 ♪リリリ〜ン…って。”

“つまり、この虫たちがリンリン鳴くってこと?”

“そうだよ!きっとそうだよ!”



『おぉ!ようやっとその事実に気がついたか!
 うんざりするほど聡明な親子よ。
 ………
 ギリスよ。しょうがないから
 もう一度、ゆっくりと分かりやすく鳴いてあげなさい。』

「うん♪」

♪リリリ〜ン ♪リリリリ〜ン



“あら、ホンと♪
 この虫たち、すごく綺麗な音色で鳴くのぇ。
 きっと、このバッタはあれね。コオロギね。コオロギ。
 コオロギに決定♪”

“でもさぁ、コオロギって…確か黒っぽい色だよ。
 なのにさぁ、この虫たちって、緑じゃん。おかしいよ。”


『………
 もう、いいんだよ。少年。
 確かに君はいいところに気づいた。
 だが、もう、どうでもいい。いいよ。コオロギで。
 イナゴよりは、ずっとましだから。コオロギで決定。
 せっかくここまで来たんだから
 これ以上、話しをややこしくしないでくれよ。』

「そ、そうだね。
 このかぁちゃん相手に贅沢は言ってられないからね。」



“ねぇ、ママ。やっぱり、コオロギは黒だよ。
 この虫…コオロギじゃないよ。”

“マー君。そんなママを困らせることばかりゆって。
 いいですか?ママは、もう、コオロギに決めました。
 この虫は、コオロギなんです。決めたんですぅ〜。
 それよりもマー君。ママ、あれほどゆったでしょ?
 コオロギを緑色に塗ってはいけませんって。
 それなのにどうしてコオロギを緑色に塗ったの?
 もう、パパに言いつけますからね!”

“ち、ちがうよ、ママ。
 ボク、コオロギを緑に塗ってないよ!言いがかりだよ!”

“まぁ、ウソおっしゃい!
 それじゃ、そうしてこのコオロギは緑色なの?”

“そ…それは…そう。
 このコオロギはミドリコオロギっていう新種のコオロギなんだよ!
 それで、このコオロギはイナゴと同じ色だから
 きっとイナゴみたく、つくだ煮にしても
 とってもおいしい新種なんだよ!”

“そ、そんな難しいこと言うんだったら
 ママ、この虫はイナゴでいいと思うわ。
 だって緑色なんだもん…。
 それで、さっきの♪リリリ〜ンは
 やっぱりあれはパパからの電話だったことにすればいいんだわ。ね。
 ママ、この虫はイナゴに決定♪つくだ煮に決定♪”

“ダメ、絶対に納得いかない!
 これは新種のミドリコオロギに決定!絶対決定なの!
 それで、新種だから
 きっとつくだ煮にしてもすっごく素敵な味がするの♪”

“マー君!そんなワガママがかり言うんじゃありません!
 これはイナゴです!さっきのは電話です!
 イナゴはふつうにつくだ煮にすればすごくおいしいんです!”



「なんだか…要するに僕達の運命は“つくだ煮”で決定みたいだね。」

『あぁ。いつのまにか、そう言う結論になってたようだな。
 まぁ、あれだ。
 どこで、どう道を間違えたのかなんて…
 もはや考える気にもならない展開だな。』

「そうだね。あまりにも投げやりな展開だよね…。
 ところでさぁ。兄さん。もう、決めた?」

『…ん?決めたって、何を?』

「イナゴかコオロギか」

『キリギリスだろ!俺達は!』

「あっ、そか。」


そうこうしていると…
いつのまにか、タナカ家のパパが帰ってきた。



“(パパ登場)
 ただいまぁ。”

“あら、お帰りなさい。いつ…帰ってらしたの?”

“今だよ、今。たった今。
 何回インターフォン押しても誰も出てきてくれないんだもの。
 それでおかしいなと思って自分でカギを開けてドア開けたら
 ウチの呼び鈴、壊れて音が出なくなってるじゃん。”

“えっ?ほんとう?ママ、全然気がつかなかったわ。
 ……あっ!マー君!
 インターフォンを壊してはいけませんって
 ママあれほど言ってたのに!ダメでしょ!マー君!”

“そ、そんな。今度こそ言いがかりだよ!ボクじゃないよ!”

“いいえ、マー君です。マー君がやりました。
 ママ、そう決めました。たった今、決めました。
 壊しやマー君の仕業です。
 もう、マー君がすぐにインターフォン壊して困りますって
 パパが帰ってきたら言いつけますからね!”

“……パパ、ちゃんとこうして聞いてるんですけど…”

“言いつけておきましたからね!”

“……はい。パパ、聞きました。”

“ボクじゃないのに…ボクじゃないのに…”

“そ、そんなことより
 お前達、ここで何していたんだい?”

“そうそう、パパ聞いて下さる?
 マー君がリビングの窓を閉め忘れていたら
 庭からイナゴが迷い込んできたの。
 今日は、このイナゴでつくだ煮ね♪”

“パパ、違うんだよ、聞いてよ。
 ママが閉め忘れたんだ。
 でもね、そのおかげで新種のミドリコオロギが発見されたんだよ。
 すごいよね。ボクが発見したんだよ。
 だから、お祝いで今日はコオロギのつくだ煮ね♪”

“ちょ、ちょっと待ちなさい。
 お前達がイナゴとかコオロギとか言い争ってるのは
 ひょっとして…この、バッタ達かい?”

“えぇ、そうよ。イナゴよ。”

“違うよ、だから、コオロギだよ!”

“こらこら。二人とも間違ってるぞォ
 このバッタはねぇ、コオロギでもイナゴでもない。
 パパは昔からこの辺のバッタには詳しいからねぇ。”



「に、兄さん!
 ようやっと、ようやっと僕達の正体が明らかにされるよ!」

『落ち着けギリスよ。
 俺達は最初からずっとキリギリスだ。』

「あっ、そか。」



“いいかい?ママ。マー君。
 このバッタ達はねぇ
 「ギスギスギッチョン」っていうんだよ!”



『どこのローカル・ルールだよ!どこの!
 こら、父親。こんどこそお前、外に出ろ!
 なんだよギスギスギッチョンって。
 昆虫?ねぇ、それ、そもそも昆虫?
 ねぇ、ケンカ売ってる?売ってる?
 買うよ。マジ買う。ぜってぇやってやる!』

「ちょ、ちょっと兄さん落ち着いて。
 さすがに相手が悪いよ。無茶だよ。」



“ねぇ、ギスギスギッチョンはつくだ煮にできるの?”

“ははは、ママはつくだ煮が好きだねぇ。
 ギスギスギッチョンはつくだ煮にはしないよ。
 でもさ、鳴き声が独特だから
 玄関で飼って、インターフォンの代わりにしようよ!”

“なぁんだ。つまらない。
 つくだ煮にできないのなら、ママは興味ありません。”

“ボクも、興味なぁし!さっ、ゲームボーイやろ。”

“なんだなんだぁ。しょうがない。
 それじゃぁ、パパがちゃんと責任をもって世話をしよう。
 さぁ、ギスギスギッチョン達。
 パパが水槽に住まいを作ってあげるからね♪”



『ふざけんなコノヤロウ!
 もう一度ギスギスギッチョンなんて呼んでみやがれこのやろう!
 お前をコッテンパンのギットンギットンにしてやる!
 来い!こらぁ!かかって来い!コノヤロウ!』

「兄さん、ねぇ、落ち着いて。
 ようやく飼ってもらえるようになったんだから!ね。ね。」

『ふざけんな!何が飼ってもらえるだ!
 俺はキリギリスだぞ!キリギリス!
 ギスギスギッチョンなどと呼ばれて生きていくくらいなら
 いっそイナゴとして立派に死ぬ!
 あるいはコオロギでもいい!
 えぇい!こうなれば腹かっさばいて
 ハラワタと体液を撒き散らしながら緑々しく死んでやる!』

「兄さん、落ち着いてぇ、落ち着いてぇ〜……」




それから、数時間後…



「で?兄さん…。
 さっきからものすごい勢いで
 キュウリにむしゃぶりついているように見えるんだけど…」

『キュウリじゃない。
 いいか、これはキュウリじゃない。
 ハウスモノのキュウリというやつだ。
 お前が言うキュウリよりも7倍はうまい代物だぞ!』

「いや、そういうことじゃなくて…
 さっきまでギスギスギッチョンとして死ぬくらいならどうたらとか
 かなり威勢良く叫んでいたみたいだけど…」

『もちろん。私はキリギリス。
 それ以外の何者でもない。
 私はキリギリスであることにプライドを持っている!』

「その割には…
 さっきからドアノブがかちゃかちゃいうたんびに
 「♪ギスギスギッチョン」とかゆってるのは
 あれは、つまりどう言う意味?」

『それはそれ、これはこれだ。
 つまり、我々はプロ・インターフォン契約を結んだ以上
 プロ選手として球団側の期待には答えなければならないわけだ。
 球団は我々に「♪ギスギスギッチョン」を望んでいる。
 我々のギスギスギッチョンぷりに、年俸1000本キュウリという
 高額を提示してくれたんだ。
 プロとして、それに答える義務があるとは、思わんのか!』

「つまり、あれだね。
 キュウリさえ食えれば、何でもするんだね。兄さんは。」

『あっ、お前、そうやってまた兄さん凹ませるようなことを…
 お前は、もう一度
 兄をしてモロッコをでっぱらしめようともくろんでいるのだな?
 そんなにモロッコをでっぱらせて
 何をたくらんでいるのだ、ギリスよ!』

「そんなことたくらんでなんかいないよ!
 ………
 それよりもさぁ。
 なんで夏のうちから
 そうやって食べるために一生懸命になろうとしないのかな?」



『それは、私がキリギリスだからだ!(すごおくきっぱり)』



「……ねぇ、兄さん。
 やっぱり、今度の夏はさ
 ちゃんと働いて、冬困らないようにしようよ。ね?」

『そうだな。今年は夏中も、ちゃんと働こう。
 ギスギスギッチョンと…』

「ここで永久就職かよ!!」


こうして、2匹のキリギリスは
大冒険の果てに、自力で、安住の地を見つけることができましたとさ。
みなさんも、野山で、草むらで
健気に働いて自活するキリギリスをみつけたら
優しく、声をかけてあげてくださいな。
ギスギスギッチョン、と…


(相変わらず、オチ弱く…完)










(さてさて。いよいよ第四部です。すみません、だらだらと。
 初めて見にこられた方は、とりあえず数号さかのぼって
 単発モノの駄文でも読んで見て下さいな。
 それで少しでも面白いと思ったら、第一部よりお読みください。
 ちなみに常連の方は、必ず第一部から読むこと!←課題図書指定)


タナカさん宅の庭を横切り
庭に面したリビングの前まできたキリスとギリス。
わずかに開いた窓の隙間から中をのぞくと
子供が一人寝そべって
夢中になってゲームボーイをやっている…


「ねぇ、ねぇ、キリス兄さん。」

『ん?なんだ?ギリスよ。』

「やっぱ、いくら子供って言っても
 間近でみると、むちゃくちゃでかいよね。人間って。」

『ふんっ!デカイだけさ。
 あんだけでかい図体して、羽音一つ満足に鳴らせない
 哀れな脊椎動物どもさ!』

「兄さん。また、そうやって…。
 相変わらず口が悪いんだから。
 ……
 それよりさ。
 なんだか、あの子供が熱心にやっているアレ。
 あのピコピコ音がでてるやつ。
 アレって、何?」

『んっ?…アレか?
 アレは、確か…えぇと…そう。
 そうだ。確か、あれは“ゲームウォッチ”とかいうやつだ。』

「………
 ……
 …
 あれっ?
 ……兄さん!」

『何だ。』

「読者のみんな…誰もついてきてないよ。」

『な、何と!』

「なんか…こう…
 途方もなく分厚いジェネレーションギャップのような何かが
 こちらとあちらを隔てているような…」

『あ、あ、間違い。すごぉく間違いでした、皆様。
 し、失礼いたしました。
 あれは…えぇと…確か…
 そう。あれは、“たまごっち”でした!』

「………」

『あ、あれだね。
 “ファミコン”って言ったっけ?違う?違う?
 もっとちっちゃいの?
 それじゃぁ、あれ?
 あのぉ…“ザウルス”?
 えっ?それはゲームじゃない?
 えぇとね、それじゃぁ…分かった!
 “カセットビジョン”!
 ね。当たり?当たり?』

「あ、もう、いいよ。兄さん。
 ぢつを言うと、僕、たいして興味ないから。
 それよりも、僕をないがしろにして
 誰か他の人と会話するのやめてくれる?」

『そうか?もういいか?
 まぁ、あれだな。
 ああ言うゲーム機は種類が多すぎてね。
 さすがの兄さんにも…』

「ところでさ。
 あの子供。いつ僕達に気がついてくれるかな?」

『何を言っている我が弟よ。
 いつ気がついてくれるのか?ではなく
 これから気づかせるんだよ。お前が。』

「えっ?ぼ、僕が?」

『そうさ。
 ああいうゲームに熱中している子供はお手上げ。
 まわりのことなんて眼中にないから。
 いくら待っていても気づいてなんかくれないさ。
 けれども、所詮、子供は子供。
 こっちがその気になってアピールすれば
 動くものにはすぐに飛びついてくるよ。
 なんといっても、子供はみんな、昆虫大好きだからね。
 『いつの時代も、子供は夢見るプチ・ファーブル』
 えぇと…なに子ちゃんの言葉だったっけな…
 まぁ、そう言うことだから
 安心して、逝ってこい。ギリスよ。』

「だから、そう言うことなら
 安心して兄さんが行ってくればいいじゃないか。
 いつも危険なことは俺ばっかし…」

『ははは。何を言っているんだい?ギリス。
 兄さんにだってちゃんと考えがあるんだよ。
 そうだなぁ…
 分かりやすく言うなら…
 そうだ。例えば、こんなことわざがある。
 「俺が口からイモ食って
  お前のケツから屁がでるかい?」ってね。』

「………それ、どう言う意味?」

『つまりさ。
 いくら俺達が一心同体の仲良し兄弟だからって
 俺がイモ食べても、お前からオナラは出ないだろう?
 それと同じように
 いくらお前が叩き潰されたって
 俺が死ぬ危険はちっともないじゃないか。』

「そういうことマユ一つ動かさずに言える
 兄さんの精神力の強さは相当なものだね。」

『ははは、そうだな。
 遠慮せずにもっとほめてよいぞ♪』

「ほめてなんかいないよ!」

『どうした?ギリスよ。
 恥ずかしがらずにどんどん兄をほめていいんだぞ?』

「………
 もう、いいよ。
 僕が行ってくるから。」

『そうか!行ってくれるか!
 偉いぞぉ♪ギリス。
 聞き分けの良い弟は、お兄ちゃん大好きだぞ。』


こうしてギリスは
ただ一人、勇気を出して子供の前へと歩き出しました。
トボトボと。しかし、慎重に…。
子供の視界のギリギリいっぱいのあたりを
さりげなく意識しながら歩き回る…
三歩進んでは、二歩もどり、そして今度は…
ちょこちょこ、ちょこちょこ。

「も、もうちょっと…近くまで寄ってみようかなぁ」

慣れてくるにつれ、次第に大胆になるギリス。
恐怖心よりも好奇心がつのりはじめる。


と…その時。


ふいにゲームボーイから目をそらした子供の目と
ギリスの視線とが交錯する。
神の戯れか、悪魔の仕業か。
一瞬にして凍りついくギリス。
顔から血の気が引き(正しくは体液。)、そして
…時が、止まる。

「先に目をそらしたら、殺られる!…なんとなく。」

ピンと張り詰めた緊張の糸は
しかし、あっさりと切れる。
先に目をそらしたのは、子供のほうだった。
ふたたび、何事もなかったかのように
手もとのゲームボーイに目を落として熱中する。

こうして、事無きを得たギリスは
一目散に、兄の元へと撤退する。


「兄さん!!むちゃくちゃ怖かったよぉ!!」

『う〜む。
 その割には…
 なんかちっとも実りがなかったな。』

「そういう冷たいこと言うなよ!」

『だって、お前。
 子供の気を引くのが目的なのに
 気づかれてびびって逃げ帰ってきたんじゃぁ
 意味がない。
 しかも、あまり興味を引きつけてない見たいだし…』

「それは、そうだけどさ…」

『あれだな。
 アピールが足りないんだよ。アピールが。
 例えばさ。お前、バッタじゃん?』

「兄さんだって、そうだろ!」

『俺のことはいい。
 とにかく、お前はバッタなんだから。
 もっとバッタらしさっていうの?
 ちゃんとアピールしなくちゃ。』

「バッタ…らしさ…
 例えば、ジャンプするところ、とか?」

『それはベタだね。誰でも思いつくよ。インパクト弱すぎ。
 もっとさぁ…こぅ…ぐっとくるような…
 そうだな。
 むしろ“緑っぽさ”を全面にアピールすような…』

「み…みどり?」

『そう。
 お前のあふれんばかりの緑っぽさを
 余すところなくアピールすればいいんだよ!
 これならインパクトあるよ。
 例えばさ。こうするんだ。
 あの子供がお前に気がついたとするじゃん。
 そしたらさ、いきなり目の前で腹かっさばいて
 ハラワタとか体液とかそこらじゅうにぶちまけて
 「もう、全っっっ部、緑ッス!」
 くらいアピールするんだよ!
 うわぁ、もう、緑々しぃ♪』

「なんだよそれ!緑々しぃって。死んじゃうだろ!」

『死ぬほどアピールするんだよ!堂々と!命がけで!』

「そんな、無茶なぁぁぁ!!!」

などと不毛な言い争いを繰り広げていると…
いかにもかったるそうに
子供が台所に向かって声をあげる。

“ママァ。変な虫が入ってきてウザイんだけど…”


「に…兄さん?」

『……ん?』

「つまり…この子が…
 夢見るプチ・ファーブル?」

『………
 ……
 …
 まぁ、あれだな。
 原則には例外ってものがあるからな。ははは…。』



というわけで。
あっさり子供に無視され続けるキリスとギリス。
“孫子(まごこ)の兵法”すら通じない強敵相手に
二人の勇者は、どう戦うのか?
むしろ、ここまでダラダラと引っ張った作者は
一体どうやって終わらせるのか?
終わるのか?
大丈夫なのか?
やっぱりごめんなさいなのか?
いつもより多くの不安を胸に
キリスとギリスと作者はの冒険は
疾風怒涛の第五部へ…


つづく




…かもね。(おい)








(すみません。お待たせしてまして…第3部です。
 と言うことは、第二部、第1部を先に読んでおいて下さい。
 毎度毎度、お手数をおかけしております。)

ようやく、村里一番のおお金持ち
タナカさん宅の玄関先まできたキリスとギリス。

『で…、聡明なる我が弟ギリスよ。』

「ん?なんだい?キリス兄さん。」

『つまり俺達はこうして玄関の前にいるわけだが…
 これから、一体どうするつもりだ?』

「ん…んと…確か、玄関では呼び鈴を押すんだよ。」

『なるほど。
 すると家の中で♪ピンポーンと鳴って
 奥さんか誰かが「はい、どちら様ですか〜?」とくる。
 そこで俺達はインターフォンにへばりつきながら
 ここぞとばかりに♪リリリ〜ン……
 ………
 つまり俺達はインターフォンの代わりにもなりますよってことを
 ここんちの奥さんに売込みに来たわけか?』

「………」

『もう一度聞こう。聡明なる我が弟よ。
 俺達は、何か、進むべき道を間違えてはいまいか?』

「あ…あれだね。
 ちゃんと玄関から礼儀正しくっていうのは
 ちょっと、僕達昆虫には…そのう…
 …あれだったかな。
 やっぱさ。
 さりげなく庭かなんかで鳴いているところを
 「あら?この虫の音…ひょっとしてキリギリスかしら?」
 なんてね。
 ここの奥さんとかに気づいてもらえるのがいいよね。
 さりげなくてね。やっぱ昆虫って感じでね。
 風情あるし。ね。ね。」

『なるほど。
 そして奥さんは、庭で奏でる我らの旋律にしばし酔いしれる。
 あぁ、美しい虫の音、安らぎのひととき…
 この寒さ染みいる冬の日
 突然訪れた夏の夜の調べに、時を忘れて…
 ………
 で、そのあと、肝心の俺達はいつ安らげるんだ?』

「ほら、僕達に気がついた奥さんが
 そっと僕達を虫かごに…」

『違うな、弟よ。
 それはない。絶対にありえない。
 いいか?よく聞け。
 仮に奥さんが俺達の奏でる旋律に聞きほれたとして…
 彼女が望むのは、俺達の奏でる音色だ。
 俺達の体じゃない。
 な。分かるか?
 お前がここんちの奥さんに何を期待してるのか知らんが
 人のウチと見ると、とりあえず人妻にこだわるクセ
 お前のそう言うところがよくないと思うぞ、兄さんは。』

「ち、ちがうよ!
 そんな、やらしい言い方するなよ!
 そんなつもりじゃないよ!」

『フッ…それはどうだかな?
 全く、虫も殺さないような顔して…』

「や、やめろよ!
 その意味ありげな半笑いはやめてくれよ!
 しかも、なんだよその“虫も殺さないような顔”って…
 俺が、その虫だよ!」

『まぁ、とにかくだ。
 お前には、人間ってものが全くわかってない。』

「なんだよ!
 それじゃ、兄さんにはいい考えでもあるのかよ!」

『無論だ。我が愚鈍な弟よ。』

「ぐ…ぐどん…って」

『いいか?よく聞け。
 確かに、俺達の美しき旋律をちゃんと理解してくれるのは
 それは、人間の大人達だ。
 その点で、あくまで人妻狙いにこだわるお前の性癖も
 あながち間違っているとはいえない。』

「ち、ちょっと、まって…」

『しかしだ。まぁ聞け。
 俺達昆虫を“虫かごで飼ってくれる”のは
 間違いなく子供達だという大事なことを
 お前は見落としている。
 いいか?
 俺達の奏でる旋律に聞きほれてくれるのは
 それは、大人達さ。
 そして、俺達のエサ代や虫かご代を出すのも
 やはり、大人達さ。
 しかし、直接俺達の世話をしてくれるのは子供達だし
 彼らが“キリギリスを飼いたい”と言い出さなければ
 全ては始まらないんだ。
 従って、俺達がこの冬
 寒さをしのげる快適な居住環境を手に入れるためには
 まずは“昆虫っぽさ”で子供達をとりこにし
 次に“美しき虫の音”で奥さんをとりこにして
 奥さんの財布から、虫かご代やエサ代をひねり出す。
 これが、戦略というものだ。
 な?分かったか?
 人間を攻略しようという時に
 とっておきの虫の音を高らか奏でながら
 いきなり玄関とか奥さんとかめがけて突撃してどうする?
 それは、城を攻めるときに
 手のうちを全てさらけ出して
 いきなり大手門や天守閣に攻めかかるようなものさ。
 そんなんじゃ、いくらやっても勝てない。
 どのような堅城でも、かならず搦め手がある。
 人間の場合、搦め手は…子供さ。
 そしてとっておきの手のうちは…
 最後の最後に見せるものさ。』

「………
 兄さん。
 兄さんって、やっぱスゴイや!」

『なぁに。それほどでも。
 敵を知り、己を知れば、百戦して危うからず。』

「かっこいぃぃぃ☆
 ね。ね。それ、誰の言葉?」

『“まごこ”さ。』

「ま…まごこ?」

『あぁ、そうさ。
 孫に子供の子って書いて“まごこの兵法”。
 孫の子供だから
 ひょっとしたら“ひまごの兵法”と読むのかも知れん。
 しかし一般的には…やっぱり“まごこ”だね。
 古代中国の偉大な兵法家、まごこちゃんだよ。
 すっごく戦争が強い女の子だったんだ。』

「す、すっごいね。まごこちゃん。
 古代中国で活躍していたのに
 平成の世に生きるキリギリスにもちゃんと役立つような戦略を
 そんな昔に考えていたなんて…
 あれだね。
 中国人にしておくにはもったいなかったね。」

『そうだな。
 まごこちゃんは、キリギリスにこそ欲しい逸材だったアルヨ〜。
 ………
 ……
 それはそうと。
 ほら、見ろ。あそこの部屋。』

「ん?…
 あっ、子供!」

『そうだ。最初の戦略目標だ。
 ちょうど庭に面したリビングに子供がいる。
 ごくわずかに開いている、あの窓の隙間から
 いざ、のりこむとしよう!』

「えっ?ち、ちょっと…
 やっぱ、いきなり、のりこむの?
 なんか、怖くない?」

『なにを軟弱なことを!
 あぁ、臆病なり我が弟よ。
 何をいまさら、臆しているのだ。
 それともお前は、ここで寒さに震えつつ、餓死したいのか?
 お前のような軟弱者にこそ、この言葉を授けよう。
 汝、虎穴に入れずんば、虎児を得ず!』

「こ、コケ…?な、なにそれ?
 「入れずんば」ってあたりが
 なんか微妙に間違っているような…
 ひょっとして、それも…まごこちゃん?」

『いや、えぇと…
 これは…なに子ちゃんだったかな?
 とにかく
 「どんなにたくましい虎だって
 お尻の穴にねじ込んでいるばかりじゃ
 虎児は授からないんだぜベイベー」
 っていう意味さ。』

「………いや。
 なんか、すっごく違うっぽいし。
 しかも、全然意味が通らないよ!」

『うるさい!要するにだ!
 それなりの成功を収めるためには
 少々の危険をかえりみるな!っていうことだ。』

「なんで結論だけあってんだよ!」

『うるさい!だまれ!これ以上しゃべるな!
 俺より目立つな!
 とにかく、あの子供を攻略すべく、突撃ぃ〜!
 えい、えい、おーぉぉぉぉ!!!!!』


というわけで、ようやくタナカさん宅へと突撃を敢行する
我らが勇者、キリスとギリス。
さっさと行けよ!さっさと!
………
大きな希望と小さな不安
そしてとっておきのまごこちゃんの兵法を胸に秘め
勇者達の戦いは、いよいよクライマックスへ…。

(おい、これ、本気でまだ続くのかよ!)

筆者の限界をそこはかとなく感じさせつつ
激動の次号へ…

絶対に期待せず、待て。








(すみません。またしても連載ものになりました。
 前号コラムを最初にお読みください。)

こうして、キリスとギリスの2匹は
音楽を聞かせてあげるかわりに
冬を過ごすための暖かな住まいとエサとを手に入れるべく
人間達の住む人里へとおりてきました。

『ところで…ギリスよ。』

「んっ?なんだい?キリス兄さん。」

『人間達の“すみか”がたくさん見えてきたわけだが…
 いったい、どの人間とプロ契約を結ぶんだ?』

「それは…やっぱ優しくって思いやりのある人間と…」

『そうか。で、そういう人間は、どこのウチに住んでるヤツだ?』

「そ、それは、家を見ただけでは分からないよ。」

『それじゃぁ、お前、どうすんだよ。
 一件一件家を回って、「お宅は優しいですか?」とか
 聞いてまわるつもりか?』

「そんなの無理だよ!できるわけないだろ!言葉通じないし。」

『おいおい。お前は相変わらず計画性ってもんがないね。
 事前に下調べを済ませておくとか
 先方球団のオファーをとっておくとか
 すでにある程度の条件を提示しておくとか
 そういうこと、なんにもしてないわけ?
 それで俺様にプロ化を進めるとは…
 お前、俺の代理人としての意識あるの?』

「だれが代理人だよ!だいたいねぇ。
 兄さんに“計画性”なんて言葉使って欲しくないよ。
 夏の間、何の計画性もなく遊んで暮らしていたから
 今、冬になってこうして路頭に迷っているんじゃないか!」

『あぁ、嘆かわしき弟よ…
 お前の目は節穴か?作り物か?視力はあるのか?
 一体兄の何を見つめていたのだ弟よ。いいか、よく聞け。
 この偉大な兄は
 “冬になればアリが何とかしてくれる”
 という遠大な計画のもとに、夏を精一杯楽しんで過ごしたのだよ。
 もしも、こういう計画性を持たずに夏を働いて過ごしたとすると
 どうなったと思う?
 冬になったら、俺達もアリも食料があふれかえってしまうんだよ。
 過剰生産だよ、過剰生産。
 すると翌年はすぐに減反政策だよ。
 な?分かるか?このあたりの仕組みが…』

「ちっとも分からないけど
 それはアリとかキリギリスとかには全く無関係の
 屁理屈だということは分かったよ。」

『お前は相変わらずかわいくないヤツだねぇ。
 兄の言うことを素直に聞かない弟なんて…
 兄は大嫌いだぞ!』

「ボクのいうことを聞いてくれるとかくれないとかにかかわらず
 ボクは兄さんみたいなキリギリスは嫌いだよ。」

『あっ!お前!今すっごくかわいらしくないことゆったぞ!
 あ〜ぁ、俺、すごく凹んだぞ。ものすごく凹んだ。
 むしろくぼんだよ。
 多分、ひっくりかえったら、すごくでっぱってるぞ!
 ねぇ、見たい?見たい?見せようか?』

「やまてくれよ!
 何が悲しくて、兄さんの“でっぱってるところ”を
 見なくちゃいけないんだよ!」

『そうだな。そんな下らんことをやっとる場合ぢゃない。
 どうも…あれだな。
 お前といると調子がくるうな。』

「………」

『さてと。
 それじゃぁ…とりあえず…
 外から見てるだけじゃ
 優しい人間かどうか分からんわけだし
 ……よしっ!
 とりあえず大きな家を目指そう!』

「へっ?なんでっ?」

『なんでって…
 その方がカネ持ってそうだからじゃないか。
 裕福な家にいけば
 それだけいいエサ食べさせてもらえそうだろ。』

「あっ…そ、そうか。なぁんだ。兄さん。
 ちゃんとしたこと考えられるんじゃん!」

『お…お前ねぇ。
 まぁ、いい。
 とりあえず…だ。
 う〜ん…おっ!あそこ!
 あの白くてでっかい家!』

「あっ、ホンとだ。でっかい家!
 すっげぇ、でっかい車が止まってるよ!」

『な。あれ、多分“ベンチ”っていう車だぜ。』

「ベンチ?」

『そう、“メルセ・デシ・ベンチ”。超高級車だよ。
 ベンチって言うくらいだから
 きっと座りごこちとかも最高なんだろうな。
 あの車一台で…そうだな。きゅうり二万本くらい買えるな。』

「に…二万本っ!!!!!!」

『あぁ、それくらいの高級車だ。
 あんなの持ってるくらいのウチだから
 きっと毎晩のように“シタビラメのムニエル”とか食ってるな。』

「シ…シタビラベラ…?なにそれ?」

『だから“シタビロベラのムニエラ”だよ。』

「あれ?さっきとなんか違うような…」

『うるさい。いちいち小さいこと気にするな。
 とにかく、すごく高級料理なの。すっごくうまいんだぜ!』

「へぇ〜。兄さん、よく知ってるんだねぇ。
 でさ。どんな味がするの?」

『そうだなぁ…それはもう…あれだな。
 お前が今まで食べた中で
 一番おいしいかった味を想像してごらん。』

「うんとね、うんとね、う〜ん……。
 うん。想像した!」

『その5倍はうまい。』

「なんだよそれ!全然わかんないよ!」

『分かる分からないじゃないんだよ。
 想像するんだよ。心で感じるんだ!
 頭で理解するんじゃないんだ!心だ!』

「だから無理だよ!
 だってさ。だってさ。
 今までボクが食べてきた一番おいしいものよりも
 さらに5倍もおいしい味が想像できるくらいなら
 なんだかボクの現実って
 すごく5分の一っぽいじゃん。
 ボクの人生5分の一って感じじゃん!悲しいじゃん!」

『おっ、それ、おもしろい!
 うまいこと言うねぇ。
 よし、きょうからお前のことを“5分の一ギリス”と呼ぼう。
 あるいは“ギリス5分の一”でもいい。
 どっちがイイ?』

「どっちもイヤだよ!」

『なんでさ。すごくかっこいいと思うぞ。
 5分の一の縮尺で、すごく一生懸命に生きてる人生。
 とってもリーズナブルで好感が持てるぞ。』

「やめてくれよ。情けない。」

『そうかなぁ…。
 まぁ、いいか。とにかく。
 あの家にのりこんで、見事プロ契約を結ぶぞ!
 きっとあれほど裕福な家だから
 “ハウスもののキュウリ”とか
 毎晩食わせてくれるはずだ!』

「ハ…ハウスもの?」

『そうさ。
 お前、キュウリっていえば
 たいてい、里山で自然に生えてるやつしか食ったことないだろ。』

「うん。もちろん。でも、キュウリってすごくおいしいよ。」

『ハウスものってのは、なぁ。
 そんなもんんじゃないんだ。
 人間ってさ。畑に半透明の小屋みたいのつくって
 その中でキュウリ作ってんだよ。
 でさ、その半透明の中は一年中常夏なんだよ。
 暖かくって太陽の光を燦燦と浴びてさ。
 肥料とか栄養とかもちゃんと与えられてるから
 全然味も大きさもケタ違いさ。』

「へぇ。そうなんだ。」

『その半透明のことを、“ハウス”って呼ぶんだ。
 そこで、カレー・ルウとかと一緒に、キュウリも作ってる。』

「カレー・ルウ?」

『あぁ、そう。ハウスと言えばカレーだよ。
 なんか、茶色くて変な食いもんだ。
 でも、ヒデキが感激するくらいうまいらしい。』

「だ、誰?その、ヒデキって?」

『いや、その説明は長くなるからよそう。
 とにかく、味にうるさいギャラン・ドゥなヤツさ。』

「ギャ…?」

『それも後回しだ。ややこしいから。
 それくらいハウスもののキュウリは絶品ってことさ。
 そうだなぁ、お前が今まで食ったキュウリの中で
 一番おいしかったキュウリを想像してごらん?』

「どうせまた…その5倍はうまい。とか言うんだろ。」

『7倍だ。』

「えっ…7倍!たかが、キュウリで?
 ………
 俺、キュウリのことも、7分の一しか知らなかったのかよ。
 なんだか、おれ、すごくくよくよしてきたよ。」

『そうか、それはよかった。』

「なぐさめてくれよ!」

『いや、その必要はない!』

「決めんなよ!勝手に!」

『とにかくだ。ゆくぞ!あの裕福な家庭に!
 いざ、出陣!!』


こうして、キリスとギリスの2匹は
ヒデキも感激のハウスものキュウリを目指して
里一番のお金持ち(タナカさん宅)へと歩き始めました。
大きな希望と、ほのかな不安を胸に抱いて…

2匹の小さな勇者の物語も、いよいよ、佳境へ。

(次号へ続く…)




  ヒトとキリギリス 2002/12/02(月)



キリギリスの兄弟、キリスとギリスは
人里はなれた山の奥、緑豊かな森の中で
日がな一日、自慢の音楽を奏でながら
自由気ままに、のんびり仲良く暮しておりました。
しかし、そんな彼らの森にも
次第に、冬の気配が忍び寄ってまいりました…。


「た、大変だぁ〜!一大事だよ、キリス兄さん!」

『どうしたんだい?ギリス。そんなに慌てて…』

「大変なんだよ、キリス兄さん。
 ア…アリのやつら、今年の冬は備蓄が無いって!」

『な…なんだってぇ!!』


今年の冬は、アリの備蓄が無い。
それは、キリスとギリスの兄弟にとって
降って沸いたかのような出来事でした。
夏の間をのんびり過ごして、冬になったらアリのご厄介になる。
いままで何年間も、こうやって過ごしてきたし
この先いつまでも、こうして過ごしていけるのだと…。
キリスとギリスは、アリを信じていました。
神様以上に、アリを信じていました。


『そ、それじゃぁ、例の「おとぎばなし」…
 あれは、今年はどうなっちゃうんだよ!』

「多分、今年は…中止。」

『中止ぃ?やめちゃってどうすんだよ。今年で俺達ゃ終わりかよ!』

「だから今年は、多分…自力でなんとかしろと…」

『無理!絶対無理!
 だってねぇ、お前。それって…キリギリスって呼ばないよ?
 自力でなんとかしろだなんて…。
 お前、キリギリスとしての自覚あるの?』

「そ…そんな無茶苦茶な…しかも情けないことを…」

『きっと…あれだな。
 今年の夏、アリのやつら怠けていたんだな。
 ちきしょう。生意気に。アリのくせして…』

「それは違うよ。兄さん。
 彼らは、ちゃんと真面目に…」

『じゃぁ、一体、何がどうなっているんだよ!』

「うんと…確か…不景気のあおりがどうとか…って。」

『な、なんだって?』

「つまり…一応の下げ止まりの感はあるものの
 回復の兆しがかすかに見えただけの現段階では
 いまだ状況は予断を許さないっていうか…
 ボ、ボクにもよく分からないよ!難しくて!
 とにかくアリのとうちゃんはちゃんと真面目に働いたんだよ。
 だけど、思ったようには稼げなかったんだよ。」

『そんなのおかしいじゃねぇか。
 真面目に働いたのに、備蓄がないなんて。』

「そう言うものなの!世の中って!
 いろいろと難しくて、それに厳しいんだよ!」

『なにが、世の中だよ…俺はね、ギリス。
 自慢じゃないけど
 生きてて「厳しい」なんて思ったこと、一度も無いからな!』

「それほんと自慢にならないよ。
 だいたい、僕達のこういう生き方…
 世の中のチビッ子達はどう言う風に思っているか知ってる?」

『あぁ、やはり芸術家の生き様は美しい…って』

「怠け者の生き様は見苦しいって思ってるんだよ!」

『フンッ!所詮は人間のガキンチョ風情。
 芸術家のなんたるかがちっとも分かってないよね。』

「芸術家のなんたるかを分かってもらえるかどうかはともかく
 このままだと、この冬、僕らは餓死してしまうよ。
 どうしよう?兄さん。」

『…そうだな。それが問題だ。
 う〜む…。
 ……
 …
 そうだっ!ハチ!
 なっ、ハチで行こう♪
 今年の冬は、ハチとキリギリス!
 あいつらも、アリに負けず劣らず真面目そうだから
 この冬もエサの備蓄はたっぷりあるはずだよ。』

「…そうだね。きっと、ハチミツばっかり、たくさんあるよ…」

『そうか…
 確かに毎日ハチミツばかり食えねぇか…。
 それじゃ、ダンゴムシはどうだ?』

「ど…どうしてそこにいくんだよ!」

『だってお前…、あいつら丸っこくて
 いかにも備蓄してそうじゃん!』

「なんで丸っこいと備蓄してるんだよ!」

『うるせぇなぁ、そう言うもんなんだよ。
 芸術家の感性ってヤツは。
 お前には、わかんねぇかなぁ…。』

「ちっとも分からないよ。
 とにかく、ダンゴムシは却下。
 だってあいつら、一体何食ってるのか分からないもん。」

『ま、それもそうだな。
 よし、それなら同族でいこう。
 イナゴ。ね。イナゴの連中に、エサ分けてもらおう♪
 分けてくれなかったら、あいつら佃煮にして食っちまおう!』

「なに勇ましいこと言ってんだよ。
 イナゴよりも体小さいくせに…
 だいたい、彼らはもう、とっくにいないよ。」

『へっ?』

「ほら、秋のはじめ頃だっけ…
 彼ら、穀物をもとめて西の方に大移動してっちゃったじゃん。」

『そ…そうだっけ?』

「そうだよ。忘れちゃったのかよ。
 せっかく一緒に行こう♪って誘われたのに
 『俺達芸術家は、お前ら根無し草とは違う!』とか
 偉そうなこと言って断ったのは兄さんじゃないか。」

『へっ?…言った?そんなこと。俺が?』

「そうだよ。言ったよ。イナゴ達、カンカンに怒ってたよ。」

『そ…そうか…。そんな出来事が…あったかもしれん。
 しかし、実際…良くぞゆった、俺!
 だいたい、食い物に目がくらんで
 あっちふらふら、こっちふらふらなんて
 イナゴのやつら、よくそんなことができるよ。
 みっともないったら、ありゃしねぇ。』

「……それ。鏡見ながら、同じ事が言える?」

『とにかくだ!イナゴは却下。
 そうだ、トノサマバッタにしよう。
 あいつらはなんてったって支配階級だからね。
 老いも若きも男も女も、み〜んな殿様。
 そこいらじゅうあっぱれあっぱれだよ。
 領民達から巻き上げた備蓄がざっくざくだ!』

「兄さん。それ、間違ってる。」

『何がだよ。』

「だからさ。トノサマバッタは、一族みんなトノサマなんだよ。」

『そうさ。あれほどバブリーな一族はいねぇだろ。
 実際、メスのトノサマバッタなんて、ほとんど自己矛盾な。
 せめてメスくらい、ヒメサマバッタとかにしてやればいいものを…』

「そういうことじゃないよ。兄さん。
 要するに、彼らは全員トノサマだから
 領民なんて一人もいないんだよ。」

『へっ?』

「だからさ。
 名前は立派にトノサマだけど
 実際はトノサマ一人一人が、ぢみちに働いて
 自分一人が食べていけるだけ稼ぐのに精一杯なんだよ。」

『まぢで?』

「そうさ。ほんとだよ。
 だけどね。彼ら、身分に上下が全くないから
 とっても仲良く暮してるんだよね。うらやましいよ。
 どんなことでも、みんなで平等に多数決で決めるんだ。」

『殿様民主主義かよ!……って、それって一体どっちだよ!』

「それにほら。
 彼ら普段から殿様商売だから。
 きっと不景気のあおりで生活は相当苦しいはずだよ。」

『そんなとこだけ、ちゃんと殿様してやがる。
 ちくしょう。
 どいつもこいつも、役に立たねぇ。
 なんか、いいアイデアはないかなぁ…』

「なんでそう、兄さんはいつも偉そうなのかなぁ。
 一番役に立ってないのは、僕達なのに…」

『あっ!お前、そういうことゆうか?普通。
 俺達はねぇ、他の奴らと違って芸術かなわけよ。
 音楽家だよ。音楽家。分かる?
 芸術、文化は心の豊かさだよ。
 ふところや胃袋の豊かさばかりに振りまわされてる連中とは
 格が違うんだよ。格が。』

「それでも、胃袋を満たさないと冬は越せないよ。」

『あぁ、やだねぇ。現実に心を蝕まれた卑しき弟よ。
 お前の精神は、すでに胃袋の奴隷か?
 お前という精神が、肉体に宿っているのではなく
 お前という胃袋が、肉体をまとっているに過ぎないのか?
 あぁ、嘆かわしい…。
 今日からお前の胃袋のことをギリスと呼ぼう。』

「兄さん!いい加減にしてくれよ。
 とにかく、生き残る手段を考えなくちゃ。
 ………
 ……
 …
 そうだ!兄さん。
 僕達は、音楽ができる昆虫だよ。
 だから、音楽を聞かせるかわりに
 エサをもらえばいいんだよ♪」

『つまり…プロ化しろと?』

「……
 いや、まぁ、そういうこと…ともちょっと違うけど…。
 まぁ、プロ転向ということでもいい。
 今までアマチュアでやってたという意識もないけど。」

『う〜む。むずかしいところだな。
 私の魂の奥底から沸き起こる旋律が
 ただの商業音楽に堕落してしまうことを考えると…』

「いや、もうちょっと気楽に考えてもらえると助かるんだけど…」

『よし。
 まぁ、背に腹はかえられん。
 プロに転向しよう。
 しかし、来シーズンはすぐにFA権取得だ。
 この条件だけははずせない。
 複数年契約は…現段階では、拒否だ。
 ところで…移籍先は、やっぱカブトムシか?』

「どうしてそこにいくんだよ!
 カブトムシには音楽はわからないよ。多分。」

『じゃぁ、どこへ?』

「音楽がわかる生き物といったら…
 やっぱり、兄さん。
 人間しか、ないよ。」


こうして、キリスとギリスの兄弟は
アリの力に頼らず、自力で越冬するために
人間の元へと、プロ契約を結びに行きました。
むしろ、飼育契約…。
アリとキリギリスの年来の関係を解消し
ヒトとキリギリスの新境地を開拓すべく
キリスとギリス、二人の勇者の物語は
まだまだ、続く…

(めずらしく、次号へ…)





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