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CoolandCool >> 写真とブログ講座 >> まだ終わらんよ >> 200308
 

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  豚男伝説 2003/08/24(日)



かの有名な“狼男”が
もはや伝説の中だけの存在となって久しい昨今。
日本のとある町に
満月の夜になると豚に変身してしまう男があらわれた。
その名も…“豚男”。


「なぁ、田中。
 お前を唯一無二の親友とみこんで
 どうしても打ち明けておきたいことがあるんだが…
 聞いてくれるか!」

『どうしたんだよ、鈴木。そんな深刻な顔して…
 俺はお前の親友だぞ!
 金の相談以外だったらなんだって聞いてやるよ。
 ………
 あ、ちょっと待った。
 いきなり恋の告白とか、そういうのはダメな。
 俺、ほら、そういう趣味ないし…
 仮に、な。仮に、おれがそっち方面の趣味があったとしてもさ
 さすがにお前だけはダメだ。無理。
 俺にも選ぶ権利はあるよ。
 だいたいお前太りすぎ。
 ぽっちゃりとかそういう次元超えてるしな。』

「………
 なぁ、田中。
 俺、結構真剣に悩んでるんだけど…
 お前、真面目に聞く気ある?」

『あるよ。もちろんだよ。だって俺達親友ぢゃないか!
 恋の告白じゃなくてちょっとほっとしたよ。』

「当たり前だろ!お前に告白なんかしてたまるか!
 そんなことより。
 さぁ、言うぞ。お前にだけは言うぞ。
 俺、実は…
 満月の夜になると豚に変身してしまうんだ!」

『………』

「………
 あれ?な、なんか、リアクションが薄くねえ?」

『あっ、ご、ごめん。そんなことないよ。
 ちょっと、あまりのことにびっくりしちゃっただけだよ。
 あ、あれだよな。
 一つだけ確認させてくれよ。
 えぇと…
 お前が豚に変身するのって、満月の夜だけ?』

「そう。満月の夜だけ。」

『ってことは…今日って、満月?』

「いや、今日は三日月くらい。つか、今まだ昼だし。」

『だよなぁ。
 ……ってことはあれだ。
 今のお前は、まだ人間の状態なんだよな。』

「そうだよ。あたりまえだろ。なに確認してんだよ。
 ………
 あれ?お前さぁ。
 何か言いたいことあるんならはっきり言えよ。」

『いやいや。何にもないよ。別に。』

「いや、あるだろ。はっきり言えよ。この際。」

『それじゃぁはっきり言わせてもらうけどさぁ。
 お前ってさぁ、ふだんから結構ブタっぽいじゃん。
 つか、あれだよ。
 親友として正直に言うよ。
 お前ってさぁ。ブタ、激似。』

「あっ、お前
 今、親友としての限界にチャレンジしてるだろ。
 さすがに激似は言い過ぎ。」

『いや、ギリギリセーフ。』

「お前が判断するなよ。
 普通なら今の一言で友情にヒビが入るどころか
 命のやり取りにだってなりかねないぞ!
 ま、お前のそういう歯に衣着せないところが
 お前らしいといえばそれまでだけど…」

『はい、それまで。』

「だからお前が判定するなよ。
 何様だよお前は。
 ま、とにかく…
 お前の言う通り、確かに俺は豚っぽいよ。
 それは認める。
 でもさぁ、満月の夜には、本物の豚になっちまうんだよ。」

『具体的には…どうなるんだ?』

「だからさぁ、しゃべろうと思っても
 ブヒブヒしかしゃべれなくなるし
 尻から丸まった尻尾だって生えてくるんだ。」

『あとは?』

「あとは…えーと…だからさぁ。
 とにかく頭のてっぺんからつま先まで
 全身、豚そのものになっちまうんだよ!」

『あぁ、それくらいなら大丈夫だ。
 お前、満月の夜以外でもかなりイイ線いってるから。
 自信もっていいよ。ほとんんど豚そのものだから。』

「お、おい、おま…」

『まぁ、聞け。
 お前は満月の夜の有様に相当ショックを受けているようだが
 冷静に分析してみれば
 ・満月の夜にだけブヒブヒ言う
 ・満月の夜にだけ尻尾が生える。
 具体的な問題点はたった2点だけだ。』

「いや、ちょっとま…」

『しかもだ。まぁ、聞け。
 尻尾に関して言えば、パンツさえちゃんとはいてれば問題ない。
 満月の夜に人前でパンツを脱ぎさえしなければいいんだ。
 まぁ、ないだろ。そんなこと。
 なにも満月の夜に好き好んでお前のパンツ下ろすヤツはいないよ。
 俺が保証する。
 だいたい満月の夜にお前に尻尾が生えることより
 満月の夜以外のお前に尻尾が生えていないことのほうが
 よっぽど違和感あるよ。
 お前見たら、みんな生えてるものだと思うぞ。』

「生えててたまるかよ!」

『お前の好みとしてはそうかも知れんけど。
 みんなのイメージとしては、お前に尻尾はミスマッチじゃないんだ。
 それほど恥ずかしがる必要はない。
 自信持っていけ。』

「なんだそりゃ。」

『それと、言葉がブヒブヒになる点は…
 あれだよ。
 普段から語尾にブヒをつければいい。
 そしたらすぐにみんな慣れるよ。ブヒブヒ言うお前に。
 満月の夜にブヒブヒしか言わないお前を見ても
 誰も文句言わなくなるよ。』

「ちっとも解決してねぇよ!!
 結局、普段から豚になれってことかよ!
 ダメじゃん。それじゃ俺、本物の豚じゃん!」

『そんなことないって。
 今までだって、俺達うまくやってきたじゃん。
 俺はお前が家畜風情なったって、今までどおり友達でいるから。
 俺達の友情は、すでに種族の壁を超えてるから!』

「超んなよ!勝手に。しかも家畜風情って…
 ちっとも超えてねぇじゃん!すげぇ差別じゃん!」

『まぁ、落ち着けよ。
 そんな冗談はさておき…』

「冗談の一言で片付けるなよ。」

『とにかくさ。
 すごく気になることが一つあるんだけど…』

「…ん?なに?」

『お前が豚に変身するのて…
 それ、本当に満月の影響なのか?』

「………
 そりゃぁ、そうに決まってるだろ。
 満月の夜にだけ変身するんだから。」

『俺さぁ、例の狼男伝説も納得がいかないんだけど…
 満月だろうと三日月だろうとさ
 月の大きさとか、月の重力の強さとか、月と地球の距離とか
 そういうのって、ちっとも変わんないわけじゃん。
 しかも満月の光りって、単なる太陽光線の照り返しだろ?
 昼間は太陽から直にじゃんじゃん浴びてるわけだし
 それが満月の夜に照り返しを受けて変身するのって
 なんか、おかしくね?』

「………
 言われてみれば…
 そ、そうだよな。お前の言うとおりだよ。変だよ!」

『だろ。
 でさぁ、ちょっと考えたんだけど…。
 ほんとはさ。たまたま満月のタイミングで豚に変身するだけで
 原因はもっとなにか別のものなんじゃないの?
 例えばさぁ…お前の体の中には
 なんらかの理由で豚の遺伝子情報とかが組み込まれてるんだよ。
 で、普段はちゃんと人間として生活しているわけだけど
 1ヶ月に一度くらいは、体のバイオリズムとかが低下して
 なんかこう、心身ともに弱まってきているときに
 豚としてもの遺伝子情報がお前の中で覚醒するんだよ。
 こうしてお前の体が豚に乗っ取られるんだよ。
 ……
 お前さぁ。小さい頃、ブタブタ星からきた宇宙船に拉致されて
 人体改造とか受けた記憶ない?』

「ないよ!あってたまるかよ!」

『いやいや。どうだか…。
 お前に豚の遺伝子を組み込むほどの科学力をもっているんだから
 記憶を改ざんするくらい、きっとできるはずだ。
 そうか…お前は幼い頃、豚風情に体をもてあそばれて…
 お前、不憫なヤツだったんだなぁ。』

「勝手な妄想するんじゃねぇ!!!」

『まぁ、落ち着け。どれほど辛い過去があろうと
 俺はお前を決して…』

「だから勝手な過去を創作するんじゃねぇよ!」

『とにかくだ。
 どのような複雑な事情があったにせよだ。
 ちゃんとした原因がわからない以上
 今でこそ、およそ1ヶ月に一度の満月の時にしか
 豚に変身するおそれはないわけだが
 今後もずっとそうとは限らない。
 たとえばこれからは満月の前後2日間くらいは豚かもしれんし
 毎月第二、第四土曜日が豚の日になるかもしれん。
 はては月水金が燃える豚の日、火木土が燃えない豚の日とか
 それくらい頻繁に豚変身デーがくるかもしれない。』

「おいおい、勝手な…」

『あくまで仮説に過ぎないけれど
 用心するにこしたことはないよ。
 お前の中に眠る豚の遺伝情報が覚醒して
 お前の身も、そして心も、豚に乗っ取られる日が
 くるかもしれないんだから。
 俺はお前の親友として、そんなことは許さない!』

「た、田中…。お前ってヤツは…。
 ………
 ところで、俺が豚に乗っ取られないためには
 具体的にはどうすればいいんだ?」

『うん。そうだなぁ…。
 とりあえず、トンカツをたくさん食え。』

「は?」

『だから、豚肉をイッパイ食べるんだ。』

「……なんか、それって逆効果っぽくない?」

『そこが盲点なんだよ。
 お前ってさぁ。トンカツよりもステーキのが好きだろ。』

「うん。牛肉のが好き。」

『ほら、お前も自分では気がつかないうちに
 豚を食べることに遠慮してるんだよ。同族意識から…』

「もってねぇよ!豚に同族意識なんて!」

『違うよ。お前自身も気がつかない深層心理で
 お前は豚に遠慮してるんだよ。
 お前の心の奥底では、すでに豚に支配されつつあるんだ。』

「そ、そんなこと…」

『だからこそ!
 今は、意識して豚を食い殺すんだよ!
 まさに、食い殺すんだ。
 食って食って、食い殺すんだ。
 豚を克服しろ!
 まずはお前の精神を、豚の支配から救い出すんだ!』

「いや、つか…
 むしろ俺のこの豚っポイ外見をどうにかする方が先じゃ…」

『そうやって、すぐお前は体からはいろうとする。
 お前の悪い癖だ。
 そうやって何人の女に振られてきた。』

「待て。それは関係ないだろう。」

『いやいや、おんなじことだ。
 なによりも大事なのは、まず、心だ。
 心は、体よりも大事だ。
 お前が自分の体を豚から取り戻している間に
 心はすっかり豚に飲み込まれてしまう。
 そうしたら、いくらお前が豚っぽくないスマート君になろうとも
 お前は正真正銘の豚だ。家畜だ。
 いいか?
 たとえ体は許しても、決して心を許すな!
 鉄則だ。
 ………
 ちなみに
 心を許すのは後回しで結構ですから
 とりあえず体を許してください。お願いします。
 というのが、ここの常連のカラスさんの、鉄則だ。
 ……願望、でもいい。』

「待て、カラスさんも関係ないだろう。勝手に巻きこむな。」

『確かに。そうだな。
 とにかく、ダイエットだとかそういうのは後回し。
 今はまず、お前の魂を豚の支配から救い出す方が先決だ。
 だから「ブヒ」を連想させるような言葉も使わない方がいい。
 ブヒブヒ言い続けると、それだけ、豚に近くなる。
 「ブヒ」に近い言葉…例えば「ムヒ」。これNG。
 虫にさされたらキンカンを使え。
 あと、「武士」とかもダメ。使うな。
 「武者」とか「サムライ」ならいい。武士はダメ。
 それと…』

「なぁ、本当にそんなベタなやり方で、効果があるのか?」

『あったりまえだろ!俺を信じろよ!
 豚肉食って、ムヒとか武士とか言わなければ
 次第にお前の心は豚から開放されていくよ。』

「いや、だって俺の心はちゃんと人間だし…」

『だからお前の深層心理では
 すでにお前の心は豚に食い荒らされているんだ。
 だからこそ、さぁ、今から豚のやろうどもを
 食い殺しにいこう。
 お前のおごりだ。さぁ、腹いっぱいトンカツ食いにいこう♪』

「な、なに勝手なこと言ってんだよ…」

『レッツ、トンカツぅ〜♪ブヒブヒ〜♪』

「いや、豚に支配されてんのって、実はお前だろ」




こうして、心強い親友の励ましにしたがって
豚男鈴木は、豚の支配を覆して人間に戻るべく
片っ端からトンカツやしゃぶしゃぶを食べ歩いた。

それから半年ほどして…

豚のごとく丸々と太った仲良し二人組みが
とある町のトンカツ屋で見られたのを最後に
彼らの姿は、ついぞ、見つけられることはなかった。

こうして“豚男”の話は、伝説となる…


        『豚男伝説』 ・ 完



追記:
 今回のお話は、ここの読者のくみさんから
 提供いただいたアイデアをもとに創作されたものです。
 従って、著作権の50%がくみさんに帰属するとともに
 オチの弱さ、ネタのつまらなさ、まとまりのなさ、誤字、脱字など
 あらゆるクレームの50%がくみさんの責任に帰属することを
 しつこいくらい明確に繰り返させていただきます。

 文責:犬司、およびくみ。
       つか、くみ。
       むしろ、くみ。
       もっかい、くみ。(しつこく)


  ではでは、また来週。



  犯行声明 2003/08/17(日)



『…ところで、岩田君。』

「は、なんでしょう?」

『君、ココに入社して、何年になるかね。』

「この秋で、まる3年になります。」

『そうか、3年か。そしたら、君。もうぼちぼち、あれだよ。』

「あれ…と申しますと?」

『犯行声明』

「………」

『もう、ちゃんと一人で書けるよな。大丈夫。
 それほど緊張することはない。
 自分のありのままの気持ちを素直にぶつけて書けば…』

「ちょ、ちょっとまってください。
 な、なんすか、その、犯行声明って。」

『なにって、犯行声明は犯行声明だよ。君だって知っとるだろ。
 ほら、例えばイラクとかで爆弾テロがあると
 いろんな秘密結社がよってたかって
 “ボク達がやりました。ウキッ♪”って言い出す、例のあれだよ。』

「さすがに“ウキッ♪”って言わないとは思いますけど…
 いや、そういうことじゃなくて
 なんで私がやってもいないテロ活動の
 犯行声明を書かなくてはならないんですか?」

『君も知ってのとおり、ウチは、秘密結社『赤い旅団』だ。
 もちろん秘密だからご近所にはあまり知られてないけど…
 しかしこれでも、業界ではちょっとした秘密結社なんだよ。
 そのウチでまる3年にもなる社員が
 犯行声明一つ書いたことがありませんなんて…。
 もしご近所にでも知れたら、君。ちょっと恥ずかしいぞ。』

「いや、恥ずかしいって、そう言う問題じゃ…。
 まぁ書けっていわれれば書きますけどね。
 私だって『赤い旅団』の一員ですから。
 ただ…実際ウチって
 テロ活動とかしてないじゃないですか。」

『あ、その辺は全然問題ないよ。だいじょうぶ。
 テロっていうものはねぇ
 誰がやったのか?ではなく
 誰が名乗ったのか?が全てなんだよ。
 要するに言ったもん勝ちだ。
 テロは…ほら。カネかかるし。ウチはあんましやらない。』

「そ、そんないいかげんな…。
 そもそもウチって
 政治的な主義主張とか、そういうのあるんですか。」

『あぁ、その辺はあれだよ。秘密だ。』

「………はぁ?」

『だから秘密だよ。
 まぁ、主義主張とかは…その時々に応じて臨機応変に。
 例えば今だったら
 自衛隊のイラク派遣、断固阻止!!
 とか、そんな感じのノリで…』

「いい加減すぎますよ!!
 それじゃ一体、ウチは何のために活動してるんですか!!」

『秘密。』

「………」

『いや、だからそういう難しいことはたいてい秘密だ。
 むしろタブーって感じ。
 まぁ、いってみればうちは秘密が売り物の結社だからね。』

「大事なことを、全て秘密でかたずけないで下さい。」

『いいからいいから。ね。
 小さいことは気にしない。
 とにかく、書いてみようよ。ね。ね。』

「ぜんぜん小さくないですよ。
 まぁ、いいですよ。書きます。
 で、私はどのような犯行の声明を書くんですか?」

『うん。それなんだけどね。あれ、10号にしよう。』

「……は?」

『だから10号。こないだの。すんごかったやつ。』

「た…台風10号?」

『ビンゴ!』

「ぢゃないでしょ!!
 あれは天災ですよ。天災。どうみてもテロじゃないでしょ。」

『誰の仕業かは問題じゃない。
 あれだけの被害をもたらした破壊活動には
 犯行声明がつきものじゃないか。』

「だからそもそも人類の仕業じゃないっていってるんですよ。」

『だったら、我々には…。
 人類を超える存在にもコネクションがあるとしたら?』

「……あ、あるんですか?」

『秘密だ。』

「無理。絶対信じない。まるで信用ない。」

『いいから書くの。10号で。ね。
 あれは、僕らの台風。いいね。決定。今決定。僕らの10号。』

「わかりましたよ。こうなりゃ、ヤケです。
 で、僕らの10号による犯行声明は、誰に向けて書くんですか?」

『もちろん政府。』

「了解。では、書き出しは…
 『愚劣なる小泉総理と無能なる官僚どもに告ぐ!』
 くらいで、いいですかね。」

『おぉ!イイ。すごくイイ。やるじゃん岩田君。
 ただね、かっこして財務省除くってっかいといて。
 あそこはお金たくさんもってそうだから、仲良くしときたい。』

「めちゃくちゃ腰砕けですね。」

『いやお恥ずかしい。』

「ほんとうにみっともないですよ。ま、いいでしょ。
 すると書き出しは…
 『愚劣なる小泉総理と無能なる官僚ども(財務省除く)に告ぐ!』
 で、よろしいですね。」

『うん。完璧』

「で、政府の何を批判するんですか?」

『その辺はどうでもいい。
 とにかく、僕らの10号を強くアピールする感じで。ね。』

「めちゃくちゃアバウトですね。では…
 『過日の台風10号は、我ら『赤い旅団』が惰弱なる日本政府に下した
  天誅であると心得よ!そして我らには、11号12号13号の用意が
  すでに整っていることを銘記せよ!』
 って感じですかね。」

『おぉ!!すばらしい!!
 政府の何が悪いのかちっともわからないけど
 とにかくイイ!俺達、台風を操ってるよ。
 ねぇ、ねぇ、あるの?11号。本当にあるの?』

「ないですよ。いや、いずれできるだろうけど。
 それより、政府になにか要求しなくていいんですか?」

『する、する。もちろんする。
 えぇとね。どうしよ。なに買ってもらう?』

「おねだりしなでくださいよ。
 クリスマスや誕生日じゃないんですから。」

『そうだな。とりあえず…政治犯の釈放。』

「えっ?ウチって、捕まってた人いたんですか?」

『うん。今朝、君の同期の小林君が、痴漢容疑で逮捕された。』

「いや、それ政治犯じゃないでしょ。」

『ないけど、捕まってるの小林くらいしかいないんだもん。
 あ、もっと大きい犯罪で捕まってるのいたよ。』

「えっ、誰ですか?」

『保坂専務。たしか…横領罪だったかな?
 社のカネで愛人にマンション買ったのがばれちゃって。
 しかも告訴したのが奥さん。もう最悪。
 
「そんな人釈放してもらってどうするんですか。」

『それもそうだな。う〜ん。あっそうだ。
 それじゃ私の免許の点数とか返してもらえるかな。』

「そんな要求するために台風10号巻き起こしたんですか!」

『分かったよ。免許も小林もあきらめるよ。
 やっぱ要求は、無難に首相退陣くらいにしとこうか。』

「そうですね。なにがどう無難なのか分かりませんけど
 そのほうが犯行声明っぽいですよ。」

『よし。それじゃ、あとは適当に書いてポストに入れといて。
 着払いでいいよ。経費ないから。』

「うわっ、せこ。切手代くらい払いましょうよ。」

『いいの。それも含めて天誅。』



こうして、いい加減極まりない犯行声明が
新聞紙面をにぎわした。
おもに東スポの三面の隅っこで…。
そして、時は流れて…10日後



『た、た、大変だ!!岩田君!!』

「どうしたんですか。そんなにあわてて。」

『小泉総理が退陣した!』

「な、なんですって!!
 それじゃ、我々の要求がとおったわけですね。」

『あぁ、全く信じられんがそのようだ。
 さっき記者会見があって
 “台風11号は何としても阻止したい。だから辞めます。”って…
 実にあっさりと辞めてくれたよ。
 しかも、、後任には無名のタイ人を大抜擢して
 “首相タイ人”を目論んでるらしい。
 するとそいつを退陣させるには
 “日本初のタイ人首相、退陣”とかややこしいことに…』

「まぁ、よかったじゃないですか。
 我々の無謀な要求がとおったんだから。」

『うん。こんなことなら
 もっといろいろと要求しておくんだった。
 ………
 いや、そうじゃなくて、これからが大変なんだ。』

「は?どうしたんですか?」

『台風11号が接近しつつある。』

「は?」

『とめなきゃ。』

「無理ですよ。」

『でも、我らの要求をのんで首相が退陣したからには
 我らも台風11号はとめなくちゃならん。』

「だから無理ですよ。」

『よし。それじゃ首相に辞めないでってお手紙書こう。
 ありのままの素直な気持ちをぶつければきっと彼だって…』

「なにがしたいんですかあなたは!!
 それじゃマッチポンプじゃないですか。」

『だってお前。本気で辞めるなんて思ってなかったから。
 もうちょっと頑張れる男だとおもってなのに、ちくしょう。
 よし、それじゃこうしよう。
 お前、独立して『青い旅団』を結成しろ。』

「は?」

『お前は私の目から見ても、もう、一人前だ。独立しろ。
 そして『青い旅団』の名前で犯行声明を出すんだ。
 僕らの11号による天誅で
 あのタイ人首相を退陣に追いこめ。』

「な、なんで俺が…」

『タイ語で書け。通じないから。』

「書けませんよ。知りませんよ!」

『うん。でも仕方ない。
 こうなりゃぁ、もう台風がくるたんびに
 緑でも黄色でも、ある色は全て使って犯行声明だ。』

「だからなんで俺なんですか。」

『だって、ほら。俺、本日づけで定年だから。それじゃ。また。』

「いや、またって言われても……」


こうして、赤い旅団改め、青い旅団の構成員
自称、岩田昭夫(35歳)は
今日も政府と台風を相手に孤独な戦いを続けている……。

 岩田著:『わが闘争〜台風でタイ人をぶっ飛ばせ』より抜粋。





  ファイト!5、6発 2003/08/10(日)



「ファイトォー!!」

「いっぱぁーっつ!!(一発)」



というわけで
最近、夏の暑さと仕事の忙しさから
ドリンク剤のお世話になりつつある犬司です。こんばんわ。
毎朝、あのこちっちゃいビンをコンビニで買っているのですが
なんなんでしょう。あのちんまい小ビンは。
例えば『キャビアをどんぶりでかっ込む』と
その勝ち組みっぷりがご近所でも評判の私にとって
あのこちっちゃいビンでちまちまと飲むのは
イメージダウンもはなはだしい。
見られたくない。恥ずかしい。
それは例えば『ウイダー・イン・ゼリー』を
両手でおいしそうにちゅうちゅうやってるところを
人に見られるくらい恥ずかしいわけですよ。
人間として致命傷なわけです。
いっそ豪快にペットボトルとかで売ってくれないものですかね。
毎朝、大ジョッキでぐびぐびっとやりたいです。

さてさて。
ちなみに『ファイト、一発』とは
某有名ドリンク剤のCMのキャッチコピーです。
なにを職業にしているのか今一つ不明な主人公の二人組みが
なぜか断崖絶壁や急流などを好き好んで歩き回り
次々とピンチに見まわれるという
主義主張の全く見えてこない、例のCMですね。
例えば彼らがつり橋などを渡ったりすると
待ってましたとばかりにつり橋の綱が切れて、橋は真っ二つ。
一人はなんとか橋にしがみつくのですが
もう一人はあと少しのところで落下してしまい
命綱だけがかろうじてあい方の手に…。
すると

「ファイトォー!!」
「いっぱぁーっつ!!(一発)」

という掛け声とともに、なぜか信じられないくらいの腕力が発揮されて
二人は無事、九死に一生を得るのです。
こうしてピンチを切り抜け、断崖絶壁の上で一息つきながら
ぐびぐびっとリポビタンDを飲み干すところでCMは終るのです。

つまり。
リポビタンDを飲んだから助かったわけではないのですね。
『ファイトー!』『一発!』という掛け声をかけたおかげで
信じられない腕力が発揮されて助かったのですよ♪
というCMなのです。
あるいは
危うく死にそうな場面を乗り越えた後に飲むと
リポビタンDはおいしく召し上がれますよ♪
というCMなのかもしれません。
いずれにせよ
主義主張の見えてこないCMには違いありません。
まぁ、強いて言えば
使いどころが異常に難しいことで有名なケイン・コスギにも
こんな使い道がるのですよ♪
という点で評価できるCMだと思います。

さてさて。
若干、話がそれてしまいましたが
いい加減本日のテーマにいましょう。
ズバリ、本日のテーマは
『ファイトの数え方』です。
すでに皆さんもお気づきのことと思いますが
『ファイト』の数え方は一発、二発です。

例えば、今、甲子園が開催されているわけですが
スタンドを埋め尽くす女子高生達からは
『○○先輩!ファイト!』
などという黄色い声援が飛び交っていることと思います。

実に無責任な話です。

例えば女子高生の黄色い声で『ファイト』なんて言われたら
たいていの男たちは頑張ります。
この私ですら、頑張ります。
(むしろ一番頑張るヤツが私です。)
頑張ろうという意気込みだけはわきあがります。
そして『ファイト!』という婦女子の期待に応えて
漠然と頑張っている自分に酔いしれてしまうのです。
あぁ、期待に応えようとしている俺って、かっこいい…
こうして
甲子園1回戦目にして13対1で敗退という壮絶な結果は
『青春の1ページ』という美しひ思ひ出の中で
全く見なかったことにされてしまうわけです。

しかぁし!!

これから厳しい競争社会へと巣立っていかねばならない若人達を
『ファイト!』などという無責任な黄色い声援で
甘やかしてはいけません。
社会へ出たなら、努力ではなく、結果こそが問われるのです。
結果こそ全て。
どれほど頑張ったとしても、13対1は13対1。
惨敗は惨敗です。
それが競争社会というものです。

いいですか?みなさん。
ここで、今一度確認しておきます。
ファイト一発のCMが放送されて以来
『ファイト』とは
努力目標から数値目標へと変わったのです。

そのことを踏まえた上で
例えば女子高生の皆さんが甲子園で先輩を応援したいのなら
「○○先輩、ファイト!あと10発くらいファイトです!
 せめて7発!最低でも5、6発はファイトしないと
 全ての努力が無駄になってしまいますよ♪」
といように具体的な数値目標を提示したうえで
シビアに結果を求める姿勢が、要求されるのではないでしょうか。

無責任な『ファイト!』の声援で
結果のともなわない『青春の1ページ』を大量生産するよりも
『ファイト5、6発!』、『あと3発!』と執拗に数字を求める声援で
より密度の濃い、青春の5ページ、6ページ、7ページと
ページ数を重ねていくことが
これからの日本をしょってたつ若人たちにとって
大切なことだと思います。

さもないと…
私のように30代を目前にして
青春時代の思い出を1ページづつ
めくっては書き換え、めくっては燃やしするような
そんなかなしい大人になってしまうから…。

という微妙に感じの悪い終わり方で
本日もぼちぼち撤収しようかと思います。
両手でウイダー・イン・ゼリーをちゅうちゅうやりながら
いつもどおりの犬司でした。
ではでは、またね。ばいばい。






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