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CoolandCool >> 写真とブログ講座 >> まだ終わらんよ >> 猿蟹合戦・第4話
 

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  猿蟹合戦・第4話 2004/01/16(金)



(毎度お手数ですが、連載物です。前号コラムからお読みください。)

さてさて。
蟹、蜂、栗、それに臼という大変奇妙なとりあわせの4人ぐみは
ようやく、山田さんちの前までたどりつきました。
すると、ちょうど裏山に出かけようとしていた猿と
玄関前ででくわしてしまいました。

「あっ、お前…こないだの蟹!」

蟹はいきなりの展開にうろたえました。
まさか、まさか目当ての猿とこんなところで出くわそうとは!
まずい、なんの準備もできてないよ。
栗は囲炉裏の中に隠れていないし
蜂は水がめの中に待機してないし
臼にいたってはどうやって天井裏に持ち上げるか
考えてすらいませんでした。
全く準備を整えていない玄関先で
いきなり宿敵との決戦を強いられた蟹でしたが
しかし、もはやこれまでと腹をくくって言いました。

「やいっ!このボクを野良呼ばわりした、にっくき猿め!
 今日はこの心強い仲間達と力をあわせて
 必ずや君をこらしめてやるから、そう思え!」

ビシッと、右手のハサミをつきつけて言い放ちました。
燃えるような目で、猿を真っ直ぐ睨みつけました。
しかし、猿は全く不思議そうな顔で聞き返しました。

「えと…君の心強い仲間って…、そこの栗のこと?」

猿は、臼のくぼみの底で心地よさげに転がっている栗を指しました。
蟹は慌てて後ろの栗を振り向いて言いました。

「ちょ、ちょっと…大事な場面なんだからしゃきっとしててよ。栗さん。
 それに、えっとね。えっとね。
 この栗さんだけじゃないぞ!あの蜂さんだって仲間なんだから!」

まるで他人のフリをしながら近くを飛んでいる蜂を指差しました。
蜂は一瞬ドキッとして「余計なこと言うなよ!」という表情でした。
猿は半ば呆れ顔で言いました。

「つまり、ミツバチとイガグリを仲間にして、僕を懲らしめにきたわけ?」

「そ、それと、この臼さんも仲間だもん!」

「うんうんうぅぅ〜ん♪」

猿は、本気であきれ果てて言いました。

「わかった、わかった。よかったね。お友達がいっぱいできて。
 とにかく、俺は今、キー子ちゃんに会いに行くから
 君たちと遊んでる暇はないの。それじゃぁね。ばいばい。」

猿はあっさりと言い残して、そそくさと裏山に向かって歩きだしました。
蟹はあわてて呼びとめました。

「ま、まてぇぇぇい!ぼ、僕達に恐れをなして逃げ出そうって
 そうはいかないぞ!
 ようし、そっちがその気なら、君のいないうちに家に入って
 囲炉裏や水がめや天井裏に隠れて
 君の帰りを待ち伏せしてやるからなぁ!覚悟しておけぇ!」

有史以来、『待ち伏せをするから覚悟しておけ』という宣戦布告は
ついぞ聞いたことがない画期的な出来事でした。
それは『正々堂々』とか『敵に塩を送る』といった悠長なものではなく
もはや『歴史的素っ頓狂』と呼ぶにふさわしい暴挙でした。
さすがにあきれ果てた猿は

「はいはい。どうぞご勝手に。
 ちなみに玄関はオートロックだし
 床暖房だから囲炉裏もないけどね。」

そう言い捨てると、振り向きもせずに歩き出しました。
蟹は口から泡を噴出さんばかりにあたふたして言いました。

「ちょ、ちょっと、まてぇぇぃ!卑怯だぞ!逃げる気か!
 オートロックとか床暖房とか、卑怯だぞぉぉ!むきぃぃぃ!
 返せ!ひき返して、いざ、尋常に勝負しろぉぉ!」

もはや蟹の言い分は支離滅裂でした。
少なくとも、オートロックと床暖房を卑怯と呼ぶのは
単なる言いがかり以外のなにものでもありません。
もちろん猿は、そんな蟹の言い分を一顧だにしませんでした。

すると栗は、臼に耳打ちして
臼を玄関のまん前にどっしりと座りこませました。
そして、錯乱する蟹の肩をぽんぽんとたたいて
「私にまかせなさい」と早口で耳打ちすると
去り行く猿の背に向かって、こう、いいました。

「あ〜、こらこら。猿よ。まぁ聞きなさい。
 君が我々を相手にしないというのなら、よろしい。
 我々もこの臼を玄関前に放置して、さっさと撤収するから。」

猿は一瞬ギョッとして振り返りました。
いやいやと身をよじりつつ「すんすん」抗議の声をあげる臼を無視して
栗はさらに言いました。

「君が玄関を出たちょうどそのあとに
 こんな大きな臼がドアの前に放置されていたら
 山田のさんご夫妻はさぞかし困るだろうね。
 『あら、これではドアが開けられないわ。
  一体どこのいたずら小僧の仕業かしら』
 そして、ふと台所をみると
 どこかのいたずら小僧が、さっき盗み食いした蜂蜜のビンが
 ふたを開けたまま放置されているのさ。
 そこへ、窓の隙間から忍び込んだミツバチが
 それも佐藤養蜂場の数千匹のミツバチが
 ブンブン唸り声を上げて群がってきたりしたら
 それはもう、山田さんご夫妻をさぞかし震えあがらせるだろうね。」

猿は、しばし呆然として聞いていましたが
やおら、大きな声で反論しました。

「き、汚いぞ!そ、そんなの、俺の仕業じゃない!
 だいたい、俺は蜂蜜を盗み食いなどしていない!
 いい加減なことを言うな!」

栗は平然と言い返しました。

「あぁ、そうさ。その通り。
 でもね、問題は『君の仕業か否か』ではなくて
 『山田さんご夫妻が君の仕業と思うか否か』なんだよ。
 ちなみに、蜂蜜のビンのふたのことは心配要らない。
 これから、この蟹君が窓の隙間から忍びこんで
 自慢のハサミでこじ開けるだけさ。
 その間に、蜂君が仲間をどっさりつれてくるよ。
 なぁに、5分とかからない。」

猿は見る見る顔を真っ赤に染めていきました。
(お尻は最初から真っ赤でした。)
ギリリッと歯軋りする音が聞こえました。
そして、うめくよに、搾り出すように、こう言いました。

「お、お前ら…くそっ!汚いマネしやがって…
 一体何の権利があって、そんなことができるってんだ。
 こ、こんなことして、許されると思うなよ!
 絶対、絶対に許さないからな!」

栗は、表情一つ変えずに言いました。

「あぁ、そうだね。僕らには何の権利もないだろうね。
 ただね。
 ちょうど君が、この蟹君のことを
 『野良蟹』呼ばわりして食べようとしたときも
 蟹は、全くおんなじ事を君に言ったはずだよ。
 何の権利があるんだ!絶対に許さないぞ!…ってね。」

しばしの沈黙の後…
猿はがっくりと肩を落として、消え入りそうな声でつぶやきました。

「…わかったよ。君らの、言い分を、聞こう。」

勝負ありました。
手段はともあれ、見事な逆転勝利でした。
蜂は、「ほほぅ、ちょいと見なおしたよ」とつぶやきつつ
栗と蟹の頭上を、羽音を高々と鳴り響かせて飛び回りました。
その羽音は、まるで祝砲のようでした。
臼は、なんだか訳が分からないけど
みんなの役に立てたことが嬉しくて「うん♪うん♪」はしゃぎました。
とっても誇らしげでした。
そしてみんながイイというまでは
玄関前からテコでも動くもんかと心に決めました。
そして栗は…
「あとは、君の出番だよ。」と
蟹の肩を優しくたたいて、すぅっと後ろに引き下がりました。
あとに残された蟹は、うなだれる猿を見つめて
すこし困惑しながらも、こう、切りだしました。

「え、えぇと…
 あのね。ボクは、やっぱり野良じゃないんだ。
 でもね、あのね。君がボクを野良呼ばわりしたのは
 そんなことは、もう、どうでもいいんだ。
 人に飼われている君からみたら、ぼくは野良だろうからね。
 それは、君にとっては意味のある言葉でも
 ボクにとっては、本来全く意味のない言葉なんだ。
 ボクが気にしたほうが、多分間違ってるんだ。
 そう、蜂さんに教わったよ。」

しばらく言葉を切って、ちょっと考えてから、こう、言いました。

「それと、君のことを
 『人に飼育されている分際で!』なんて思ったのは
 多分、ボクの思いあがりなんだ。
 君だって、一方的に山田さんに支配されているわけじゃないだろうし
 それは、蜂さんだっておんなじなんだ。
 みんな、生きている状況が違うだけで
 ちゃんと自由に生きているんだよね。
 ボクだけが自由だなんて言うのは、ボクの思いあがりなんだよ。
 この臼君なんて、誰かの持ち物になって使ってもらえなければ
 本来の自分でいることすらできないんだからね。」

臼は「うんうん♪」とにこやかにうなずきました。

「ただね。ボクは、この栗さんとは違って
 おとなしく食材として食べられてしまうのはイヤなんだ。
 ボクは栗さんと違って、食べられちゃったら、それでおしまいなんだ。
 それでも、いつかは誰かに食べられちゃうかもしれないよ。
 でもね、でもね。
 少なくとも、猿さん。
 君は、なにもボクを食べなくたって
 山田さんからちゃんとご飯を食べさせてもらえるんだろ。
 ボクを食べなくたって生きていけるじゃないか。
 例えば裏山の猿たちは、食べ物がとれなければ死んでしまうから
 そういう猿に食べられるのなら、なんとなく、納得がいくんだ。
 でも、君は違う。だから、ボクを食べようとしないでほしいんだ。」

蟹は、だいたい言いたいことはしゃべり終えたという顔で
蜂と臼と栗の方を振りかえりました。
蜂だけは、ちょっと物足りないような表情で、こう、言いました。

「なんか、あれだな。
 せっかくここまで猿を追い詰めたのに…
 せっかくだから、ほら。
 なんかもっと厳しい要求を突きつけたっていいんじゃない?」

しかし蟹は、首を振りました。

「うぅん。いいんだ。
 だって、どちらかと言うと、ボクが勝手にかぁっとなったのが原因だしね。
 でも…。あっ、そうだ。
 そしたらさぁ。お猿さん。
 この臼君を、山田さんちで使ってもらってよ。ね。」

すると猿は、すごく困った顔でいいました。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。
 さすがにそれは、俺の一存では決められないよ。
 だってそんな…
 だいたいウチは床暖房でオートロックなんだぞ。
 それをいまさら臼だなんて…」

すかさず蜂が横槍をいれました。

「それなら話しは振り出しだ。
 蟹君、蜂蜜のビンをこじ開けてきなよ。
 おれは仲間を呼び集めてくるから。」

あっさり言い残して養蜂場へと飛び去ろうとすると
あわてて猿が呼びとめました。

「分かった。わかったよ。俺の負けだ。要求を飲むよ。
 要するにウチにこの臼を置いておけばいいんだろ。
 幸い物置は広く開いてるし。」

栗はちゃんと念を押しました。

「置いておくだけじゃダメだ。ちゃんと使うんだよ。
 正月にはちゃんと餅つきをするんだぞ。」

猿はもはや全て観念しました。

「分かった。ちゃんと毎年餅つきするよ。」

臼は小躍りしてはしゃぎました。
「うん、うん、うぅぅぅ〜ん♪」
それを見て、蟹はたまらなくうれしい気持ちになりました。
そして、蜂と栗を振りかえって、こう、言いました。

「あのさ。二人にも、なにかお礼がしたいんだけど…」

蜂は、照れくさそうに
「よせやい。俺はそういうガラじゃないよ」と言い残して
あっさり飛んでいってしまいました。
栗は、穏やかにうなずきながら、こう、言いました。

「私はね、最初から決めていたよ。
 この猿が柿の種を植えたその隣に、私を埋めてほしい。
 そして、君と、君の子供や孫達で
 ずっとずっと私のことを育ててほしいんだ。
 何年かして木になって栗の実をつけたら
 栗の実を混ぜて、餅つきをしておくれよ。
 まぁ、先のことはともかく、しばらくの間は…
 君と猿は、二人仲良く、柿と栗を育てるんだ。」

蟹は、目をキラキラ輝かせて
「必ずそうするよ!」と固く約束し
猿は、ほとんど投げやりな調子で
「勝手にしろ!」と言い捨てながらも
数年後の、柿と栗の味には
はやくも心が揺れ動いているようでした。

こうして、猿と蟹の合戦のお話は
ようやく、おわりを告げましたとさ。
めでたし。めでたし。

   猿蟹合戦:第4話 『終戦および和平会談』  完





 (masako #79D/WHSg URL)
ややや、なんだかほのぼの心温まるファンタジーで終わったみたい!合戦なかったけど、戦は無い方がいいもんね(^^)
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 (さちゃこ #79D/WHSg URL)
自由とかそういう思想のようなものって一概に決めつけることはできないんだなぁって思いました。(おや、なんか真面目なコメントだ笑 蜂さん、クールでかっこいいですね♪
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 (犬司 #79D/WHSg URL)
↑どもども、ご無沙汰しております。犬司です。ダラダラと長く、なおかつオチも中と半端に弱いという意味において、これぞ「まだ終わらんよ」という一品にしあがったものと思われます。笑。テーマは一応、ひとそれぞれの自由です。例えば、先進国に住む人々の視点で、独裁的権力者に支配された中東諸国の「不幸な」人々の「自由」を獲得する「正義の戦争」という理屈に、少しでも疑問を持てるような人間でありたいと思います。
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