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CoolandCool >> 写真とブログ講座 >> まだ終わらんよ >> 猿蟹合戦・第3話
 

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  猿蟹合戦・第3話 2004/01/15(木)



(お手数ですが、前号コラムを先に読んでください。)

さてさて。
蟹、蜂、栗という、奇妙な取り合わせの3人組は
いざ、猿をこらしめようと、山田さんちへと歩いておりました。
すると道端に、大きな臼がぼつんとおいてありました。
臼はとってもさびしそうでした。
やさしい蟹は、さっそく臼に話しかけてあげました。

「ねぇねぇ臼さん。こんな道端に一人で座っているなんて
 いったいどうしたの?」

しかし、臼はじっと押し黙ったまま、うんともすんとも答えませんでした。
微妙に気まずい沈黙が流れました。
こらえきれずに、蟹はもう一度たずねました。

「ねぇねぇ臼さん。こんなところで、一体何をしているの?」

しかし、やはり臼はうんともすんとも答えませんでした。
すると、栗がしたり顔で言いました。

「きっと…あれだよ。ほら。いくら昔話だからってさ
 さすがに口のない臼がしゃべるのは、やりすぎだろうって
 そういう作者の判断なんじゃない?」

それを本来口のない栗が、微塵のためらいもなく言い出すあたりに
見上げた図太さを感じました。
それでも、やさしい蟹はもう一度臼に話しかけました。

「ねぇねぇ、臼さん。作者の意図なんか気にすることないよ。
 昔話の世界では、どんなむちゃくちゃだってまかり通るんだから。ね。
 臼さん。いったいどうしたのかしゃべっておくれよ。」

それでも臼は、うんともすんとも言いません。
しびれを切らして、ミツバチはついに確信にふれました。

「なぁ、みんな。こいつ、ひょっとして…ただの臼なんじゃねぇ?」

………
それは、最初に臼にしゃべりかけた瞬間から
誰もがうすうすは気がつきながらも、目をそむけていた事実でした。
『最後は臼が味方になってくれる』
そんな自信に裏打ちされていたからこそ
蟹、蜂、栗という非力な3人で、猿を相手に合戦を挑んだのに…。
しばしの沈黙のあと、栗が遠くを見る目で言いました。

「そうか。今回は…臼、なしか。」

それは本来、言ってはならない事実でした。
「今年の47士は返り討ち」くらいの禁句でした。
めずらしく、蜂が動揺を隠しきれない表情で言いました。

「な、なぁ。今回、やめない?」

しかし、栗はきっぱりと言いました。

「いや、さすがにそういうわけにはいかんよ。読者も見てるし。
 しかし、このまま合戦をしても犬死だし…
 よしっ、そうだ!こうしよう。
 いいかい、蟹君。残念ながら今回は、君一人で猿蟹合戦してくれ。
 無論、討ち死にしてくれてかまわない。
 せいぜい華々しく散ってくれ。
 大丈夫、安心しろ。
 来年、我々がちゃんと、『猿蟹弔い合戦』をやってやるから。
 な。君の死は、無駄にはしない。」

「ちょ、ちょっと待ってよ!勝手なこと言わないでよ!
 さっきから聞いてれば、『今回は…』とか『臼なし』とか
 なんのことだかチンプンカンプンだよ!」

確かに、幼い蟹には全く理解できないことばかりでした。
栗はもう一度、諭すようにいいました。

「だからさ。とにかくこの臼じゃダメなんだ。
 いくらしゃべりかけても仲間にはならないよ。
 さぁ。今回は臼なしで残念だけど、さっさと猿と合戦しよう。
 あんまりもたもたしてると
 『犬司は結末も決めずに書き始めたんじゃないか』とか
 いらぬ誤解を読者の皆様に抱かせることになるから。
 な。そうならないうちに
 こんなただの臼は放っておいて、さっさと行くよ!」

しかし、蟹は猛然と言い返しました。

「そんなのかわいそうじゃないか!
 そんな、仲間だとかそういうことじゃなくて
 こんなところでひとりぽっちの臼さんがかわいそうじゃないか。
 それをよってたかって、ただの臼だの、放っておこうだの
 みんなひどいよ!
 ねぇ、臼さん。ぼくはちゃんと分かってるからね。
 臼さんは、ぼくの言うこと、ちゃんと分かるんだよね?」

するとどうでしょう。
臼は、大きく前後に揺れ動きながら、大きな声で返事をしました。

「うん♪」

「っておい。しゃべれんのかよ!!」(3人同時で)

うっかり蟹まで一緒になってつっこんでしまいました。
あわてて蟹はしゃべりかけました。

「あっ、ごめんごめん。やっぱりしゃべれるんだね。
 びっくりした。(どっから声を出してるんだろ?)
 それじゃぁさ。臼さん。こんなところで、いったいどうしたの?」

しかし、臼はこんどは押し黙ってしまいました。
蟹は首をかしげて、聞きました。

「……あれ?どうしたの、臼さん。
 ぼくの言うこと、分かってる?」

「うん♪」

「それじゃぁ、なんで答えてくれないの?」

「………」

臼はふたたび押し黙ってしまい
蟹は、何がなんだかわからなくなりました。
今度はミツバチが聞きました。

「臼よ。お前さん、しゃべれるのか?」

すると、臼は左右に揺れ動きながら、返事をしました。

「すん」

………
こんな返事ははじめてです。
蜂も蟹も、小首をかしげて困っていると
栗が、なんとなく分かったという表情で口を挟みました。

「つまり…多分、あれだな。
 臼よ。今君が言った「すん」はつまり「いいえ」という意味だね?」

「うん♪うん♪」

ようやく通じたという感じで
臼はすごく元気良く前後にぴょこぴょこ揺れ動きました。
栗は言いました。

「なるほど、わかったよ。
 この臼は、僕らの言うことはちゃんと理解できるけど
 イエス、ノーでしか答えられないんだ。
 要するに、「うん」とか「すん」しか言えないんだよ。」

非常に難儀な臼でした。
ふと、ミツバチはひらめきました。

「ねぇねぇ。この臼にさ。
 うんとかすんとか言え!って言ったら
 いったいどっちで答えるんだろ?」

すると栗が落ち着いて答えました。

「なんか微妙にパラドックスっぽいけど
 普通に「うん」と答えれば問題ないだろ。」

以外にあっけない結論でした。
しかし、ひょっとすると微妙な問題っぽいので
これ以上、読者の追及を避けるべく、ミツバチはさっさと話題を変えました。

「そういえば、君、どっかで見たことあると思ってたら…
 ウチの隣の鈴木さんちの臼だよね。」

「うん♪」

臼は元気良く答えました。

「だとすると…捨てられたの?」

「すんすんすんッ!!!」

今度はぶいんぶいん体を揺らして否定しました。

「あれ?確かこのあいだ、鈴木さんちって引っ越していったよね。」

「うん…」

今度はすこしうつむき加減で肯定しました。
面白そうに、栗が口を挟みました。

「なんだか、だいぶ微妙な表現ができるじゃん。
 まぁ、ようするにあれだよ。
 引越しの時に邪魔で捨てられたんだろ?」

「すんすんすんッ!!!すんッ!!」

今にも踊りかかりそうな剣幕で、激しく否定しました。
さすがに栗はびっくりしてこそこそイガに隠れました。
やさしい蟹は、臼をなだめていいました。

「そ、そんなことないよね。臼さん。
 栗さんがひどいことゆってごめんね。
 捨てられたんじゃなくて、なんか理由があって…
 え、えぇと…置いていかれたの?」

「すんすんッ!!」

またしても臼は否定しました。
ふと、ミツバチは思い出しました。

「あっ、そうだ。俺、見たよ。
 引越しの時に、トラックにちゃんとつまれてたよ。この臼。」

「うんうんうぅぅ〜ん♪」

今度は頬ずりせんばかりの勢いで、うなずきました。
ちゃんとトラックに乗って引越たのに、なぜか今、道端にいる。
蟹はしきりに首をかしげていると
またしても、栗がイガのなかから出てきて聞きました。

「引越しの時、君は、トラックの上の方に詰まれていたんだね?」

「う、うん。」

きょとんとして、臼はうなずきました。

「で、君がゴロンって落っこちたわけだね?」

「うん。」

ちょっと寂しそうにうなずきました。

「そのとき、鈴木さんちの家族は
 君が落ちたことに気がついたのかい?」

「う…す…うぅぅ…うすん。」

非常に微妙な表現でした。
つまり、この臼はちゃんと引越しの時にトラックにつまれたものの
わざと落っこちてしまいそうな位置につまれ
ドスンッと落ちたときに家族はみんな振り向いたものの
気がつかないフリをしてそのまま走り去ってしまったということらしい。
栗は、厳かに宣告しました。

「要するに、不法投棄。」

「すんすんすんすぅぅぅぅ〜ん」

臼はせいいっぱい否定しましたが
自分が捨てられた臼だということは一番よく分かっていました。
臼はひとしきり「すんすん」と叫びながら
そこらじゅうをゴロゴロと転げまわりました。
そして、ようやくおちつくと、しょんぼり肩を落として小さくうなずきました。
「……うん。」

蟹は、臼のそばに駆け寄ると
小さなハサミでうすの端っこをつまみました。

「よし。臼さん。
 きみは道端に落っこちていたから、今、ボクが拾ったよ。
 君は、今からボクのものだ。いいね。
 一緒に、猿を退治に行こう♪」

「うんうんうん!うぅぅぅ〜ん♪」

臼はがくんがくんうなずくと、大喜びで蟹を持ち上げて
臼のくぼみの中に、優しく蟹を乗せてあげました。
続いて栗も、乱暴に放りこまれました。
くりきんとんにされそうな、惨めな気分でした。
蜂は、いち早く空へ飛んで逃げました。

蟹は、誰かに所有されていないと寂しくてしかたがない臼を
なんとなく理解できる気がしました。
ちょっと不思議なきぶんでした。

「よし、みんな。猿蟹合戦に、いざ、出陣!!!」

「うんうんうん!うぅぅぅ〜ん♪」

こうして、蟹たちは元気に山田さん宅へと進軍を開始しましたとさ。


    猿蟹合戦:第3話 『不法投棄、そして、決戦へ…』 完







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