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注:この文章は、『桃の伝説 第一部』を読んでからお読みください。
侍との修行が始まった。 厳しい修行だ。 山奥に分け入り、この師匠(侍)と寝起きをともにする。 いついかなる時にも気が抜けない。 師匠は突然、私を打ち、突き、払う。 わずかの隙も見せることはできない。 わずか三日間で私の体は痣だらけになった。 なぜ、こんな目に… などとは思わない。 これは私が自分で選んだ道だ。 ただひたすら いかに相手の虚を突き いかに相手の息の根を止め いかに自らの隙をなくし いかに自らの命を守るのか という実践的な剣術のみが叩き込まれた。 武士道精神だの剣術家の心得だの そんなものには目もくれない。 単に相手を倒すための技術として 剣術を極めるための修行であった。
この師匠は、まさしく本物だ。 本当に強い。 強すぎる。 「力をくれてやる」と、言うだけのことはある。 恐らく、この師匠の下で修行し、剣術を極めれば 鬼をも倒す圧倒的な力が手に入るだろう。 その点、疑問をさしはさむ余地も無い。 しかし、修行が半年も過ぎた頃 幾つかの疑問が私の脳裏を掠めた。
まず、疑問1 なぜこんなところで山ごもりをしなければならないのか? というのもこの修行場は、実は老夫婦の住んでいた村から わずか1時間ほどのところにあるのだ。 お爺さんとよく山菜を採ったのは、すぐそこの斜面である。 村の人達もよく来ていたはずだ。 近頃でもときたま見かける。 しかも、師匠も頻繁に家に帰っているらしい!! 夕方ふらっといなくなって 翌朝すっきりした顔で戻ってくるのをよく見かける。 私だって「通学」で修行してもよさそうなものである。 まさに気分は駅前留学!! ……。 だが、どういう訳か、私は実家から1時間ほどの山奥で “人目を避けて?”山ごもりして修行をしている……
そして、疑問2 どういう訳か生活が保証されている。 つまり、私達二人は日がな一日剣術の稽古に明け暮れ 例えば食料ひとつとっても自分達で採ってはいないのだ。 にもかかわらず、私達がねぐらにしている洞窟に戻ると 焚き火がともされ、食事ができている。 師匠に尋ねても、笑ってばかり。 …まぁいい。とにかく食っとけや。 これである。 しかも昨日の料理など間違いなくうちのお婆さん得意の 「桃汁」であった。 …これだけは、苦手なのに…… どう考えても、村ぐるみで私達の修行生活を “影ながら?”サポートしているようなのである。
さらに、疑問3 仮に、村ぐるみで私の鬼退治を応援しているとしよう。 だが、どうしても解せないことがある。 鬼はたいてい「鬼が島」に生息しているのだ。 そして、その「鬼が島」はもちろん海のど真ん中にある。 そして私達の村は山奥にあるのだ!! おわかりだろう。 我が村には鬼は絶対に来ないし、鬼の被害を受けないのだ。 近所の山に出没するのはわずかの妖怪ともののけたち。 それだって、サンとアシタカがあらかたやっつけちゃったし… (注:『もののけ姫』はそう言う話じゃありません。) とにかく鬼退治のメリットはこの村には無い。 本当に村おこしのために過ぎないのなら 桃から生まれたところだけじゃなく 鬼退治したところまで全部 “でっち上げ”てくれればいいものを… もちろん、実際に鬼を退治して 沿岸地方から感謝感激の旅行客を当て込む という作戦なのかもしれないが だったらまずは近所の妖怪やもののけを一掃して 近隣の山村からの旅行客をゲットできそうなものだし… 絶対にその方が鬼退治よか簡単だろ! ……わからない。
そんな疑問を抱きつつも 私の修行は、はや一年を迎えようとしていた。
…… もう、そろそろだな。 ぼうずよ。だいぶ強くなったじゃねぇか。 …いや。謙遜することはねぇ。 実際たいした腕を身につけたよ。 人間相手だったらよほどの剣豪相手にしても負けねぇよ。 はっきりいって無敵だ。 だがな、鬼は別だ。 奴らを相手に勝つには、最終奥義を会得しなけりゃならねぇ。 桃の木一刀流正当継承者のみに伝授される 桃の木一刀流最終奥義だ。 いまから、それを伝授する。
師匠が厳かに宣言したとき 私の体に、稲妻が走る思いがした。 今までの修行の最後を飾る、門外不出の秘奥義。 これだけの強さを誇る師匠が 自ら『最終奥義』と称するほどの、究極の剣技。 いったいどのようなものなのか……
…… ぼうず。桃の「食べごろ」ってやつを言ってみろ。
へ?…な、なんですと? 桃の…食べごろですか? えぇと。 やっぱし熟しきるちょっと前ぐらいの頃が…
…… そうだよぼうず。そのとうりだ。 桃って奴ぁ、熟しきっちまうと水っぽくていけねぇ。 形も崩れやすく皮も剥きにくい。 かといって、サクッと歯ごたえがするようじゃ 中途半端な林檎食ってるみってぇで、うまくねぇ。 きっちり熟していながら、完熟の一歩手前! この一瞬の見極めが肝心だ。 剣術も…おなじだ。
??? あ…あのう。 全く、お話が見えてこないんですが。
…… ぼうず。納得してねぇ顔だな。 いいか。よく聞け。 剣術においても、相手の殺気、勝機が熟する直前 その刹那に生じる一瞬の虚を捉えることが極意なんだ。 どんなに剣術に長じたものでも 自ら打って出る直前の一瞬には、必ず虚が生じる。 その隙を逃さず、神速の一太刀をもって切り伏せる! これが桃の木一刀流の奥義だ。
なぁんだ。師匠。 だったら最初からそういえばいいじゃないですか。 “桃”は関係無いでしょう。
…… おいおいぼうず。 俺たちゃ“桃太郎”じゃねぇじゃ。 “桃”が無関係なわけないだろう。
桃から生まれたのがでっち上げだって言ってたの 師匠じゃないですか!!!
…… うるせぇ。とにかく俺は桃が好きなの。 いちいち、ちいせぇやつだな。 とにかく、今からその最終奥義って奴を伝授してやる。 これが会得できたら、免許皆伝ってわけだ。 では。 桃の木一刀流最終奥義!!! その名も『MK-5』(エムケイーファイブ)!!
えぇっ!!!!! い、いきなり横文字ですかっ、師匠。
…… だってカッコイイだろう。
…いや…その…カッコイイって… 剣術の奥義にカッコよさ求めてもしょうがないでしょ。師匠。
…… うるさい黙れしゃべるな。 とにかく俺がそう名づけたの!
…はぁ…。 MK-5ですか。えぇと。松井・清原、5ホーマー…ですか?
…… 馬鹿ヤロウ!巨人の話は二度とするな! 俺はヤクルトファンだ。 『MK-5』っていったらお前。文字どうり 『マジで、完熟、5秒前♪』だろう。
ヒっ、ヒロスエですか、師匠!! なんでいきなりヒロスエなんですか師匠!!! しかもだいぶ古い歌だし誰もわかってくれませんよ!!! (注:正しくは『マジで恋する5秒前』。 ちなみに広末本人がMK-5と略称していた。 さらにちなみに、筆者は決して 広末ファンではないので要注意!!)
…… いいんだよ。だって好きなんだよ。ファンなの! 相手が打ちこんでくる瞬間を見逃さず 「♪とっても、とっても、………とっても隙アリよ。」 とか心の中で歌いながら一刀のもとに切り伏せる! 「ダーリン、なんまいだぶ、ダーリン♪」 くぅ〜。決まった!って感じ。 この一太刀の感触がたまらんね。 まさに、最・終・奥・義! さぁ。伝授開始だ!
…馬鹿だ。 もう一度、はっきり言おう。 この師匠。馬鹿だ。 馬鹿ヤロウだ。 決して殺人剣を手にしてはいけないタイプの アブナイ馬鹿だ。 だが、この奥義。 名前はともかく、とてつもない一太刀だ。 最終奥義の名に値する剣技と言えよう。 桃の木一刀流最終奥義『(新名称検討中)』。 必ず会得してみせる。
そして、会得した暁には まずこの馬鹿を切る!!
そして、いよいよ鬼退治だ!!!!
<まさかの第三部へ>
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