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CoolandCool >> 写真とブログ講座 >> まだ終わらんよ >> ヒトとキリギリス(第三部)
 

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(すみません。お待たせしてまして…第3部です。
 と言うことは、第二部、第1部を先に読んでおいて下さい。
 毎度毎度、お手数をおかけしております。)

ようやく、村里一番のおお金持ち
タナカさん宅の玄関先まできたキリスとギリス。

『で…、聡明なる我が弟ギリスよ。』

「ん?なんだい?キリス兄さん。」

『つまり俺達はこうして玄関の前にいるわけだが…
 これから、一体どうするつもりだ?』

「ん…んと…確か、玄関では呼び鈴を押すんだよ。」

『なるほど。
 すると家の中で♪ピンポーンと鳴って
 奥さんか誰かが「はい、どちら様ですか〜?」とくる。
 そこで俺達はインターフォンにへばりつきながら
 ここぞとばかりに♪リリリ〜ン……
 ………
 つまり俺達はインターフォンの代わりにもなりますよってことを
 ここんちの奥さんに売込みに来たわけか?』

「………」

『もう一度聞こう。聡明なる我が弟よ。
 俺達は、何か、進むべき道を間違えてはいまいか?』

「あ…あれだね。
 ちゃんと玄関から礼儀正しくっていうのは
 ちょっと、僕達昆虫には…そのう…
 …あれだったかな。
 やっぱさ。
 さりげなく庭かなんかで鳴いているところを
 「あら?この虫の音…ひょっとしてキリギリスかしら?」
 なんてね。
 ここの奥さんとかに気づいてもらえるのがいいよね。
 さりげなくてね。やっぱ昆虫って感じでね。
 風情あるし。ね。ね。」

『なるほど。
 そして奥さんは、庭で奏でる我らの旋律にしばし酔いしれる。
 あぁ、美しい虫の音、安らぎのひととき…
 この寒さ染みいる冬の日
 突然訪れた夏の夜の調べに、時を忘れて…
 ………
 で、そのあと、肝心の俺達はいつ安らげるんだ?』

「ほら、僕達に気がついた奥さんが
 そっと僕達を虫かごに…」

『違うな、弟よ。
 それはない。絶対にありえない。
 いいか?よく聞け。
 仮に奥さんが俺達の奏でる旋律に聞きほれたとして…
 彼女が望むのは、俺達の奏でる音色だ。
 俺達の体じゃない。
 な。分かるか?
 お前がここんちの奥さんに何を期待してるのか知らんが
 人のウチと見ると、とりあえず人妻にこだわるクセ
 お前のそう言うところがよくないと思うぞ、兄さんは。』

「ち、ちがうよ!
 そんな、やらしい言い方するなよ!
 そんなつもりじゃないよ!」

『フッ…それはどうだかな?
 全く、虫も殺さないような顔して…』

「や、やめろよ!
 その意味ありげな半笑いはやめてくれよ!
 しかも、なんだよその“虫も殺さないような顔”って…
 俺が、その虫だよ!」

『まぁ、とにかくだ。
 お前には、人間ってものが全くわかってない。』

「なんだよ!
 それじゃ、兄さんにはいい考えでもあるのかよ!」

『無論だ。我が愚鈍な弟よ。』

「ぐ…ぐどん…って」

『いいか?よく聞け。
 確かに、俺達の美しき旋律をちゃんと理解してくれるのは
 それは、人間の大人達だ。
 その点で、あくまで人妻狙いにこだわるお前の性癖も
 あながち間違っているとはいえない。』

「ち、ちょっと、まって…」

『しかしだ。まぁ聞け。
 俺達昆虫を“虫かごで飼ってくれる”のは
 間違いなく子供達だという大事なことを
 お前は見落としている。
 いいか?
 俺達の奏でる旋律に聞きほれてくれるのは
 それは、大人達さ。
 そして、俺達のエサ代や虫かご代を出すのも
 やはり、大人達さ。
 しかし、直接俺達の世話をしてくれるのは子供達だし
 彼らが“キリギリスを飼いたい”と言い出さなければ
 全ては始まらないんだ。
 従って、俺達がこの冬
 寒さをしのげる快適な居住環境を手に入れるためには
 まずは“昆虫っぽさ”で子供達をとりこにし
 次に“美しき虫の音”で奥さんをとりこにして
 奥さんの財布から、虫かご代やエサ代をひねり出す。
 これが、戦略というものだ。
 な?分かったか?
 人間を攻略しようという時に
 とっておきの虫の音を高らか奏でながら
 いきなり玄関とか奥さんとかめがけて突撃してどうする?
 それは、城を攻めるときに
 手のうちを全てさらけ出して
 いきなり大手門や天守閣に攻めかかるようなものさ。
 そんなんじゃ、いくらやっても勝てない。
 どのような堅城でも、かならず搦め手がある。
 人間の場合、搦め手は…子供さ。
 そしてとっておきの手のうちは…
 最後の最後に見せるものさ。』

「………
 兄さん。
 兄さんって、やっぱスゴイや!」

『なぁに。それほどでも。
 敵を知り、己を知れば、百戦して危うからず。』

「かっこいぃぃぃ☆
 ね。ね。それ、誰の言葉?」

『“まごこ”さ。』

「ま…まごこ?」

『あぁ、そうさ。
 孫に子供の子って書いて“まごこの兵法”。
 孫の子供だから
 ひょっとしたら“ひまごの兵法”と読むのかも知れん。
 しかし一般的には…やっぱり“まごこ”だね。
 古代中国の偉大な兵法家、まごこちゃんだよ。
 すっごく戦争が強い女の子だったんだ。』

「す、すっごいね。まごこちゃん。
 古代中国で活躍していたのに
 平成の世に生きるキリギリスにもちゃんと役立つような戦略を
 そんな昔に考えていたなんて…
 あれだね。
 中国人にしておくにはもったいなかったね。」

『そうだな。
 まごこちゃんは、キリギリスにこそ欲しい逸材だったアルヨ〜。
 ………
 ……
 それはそうと。
 ほら、見ろ。あそこの部屋。』

「ん?…
 あっ、子供!」

『そうだ。最初の戦略目標だ。
 ちょうど庭に面したリビングに子供がいる。
 ごくわずかに開いている、あの窓の隙間から
 いざ、のりこむとしよう!』

「えっ?ち、ちょっと…
 やっぱ、いきなり、のりこむの?
 なんか、怖くない?」

『なにを軟弱なことを!
 あぁ、臆病なり我が弟よ。
 何をいまさら、臆しているのだ。
 それともお前は、ここで寒さに震えつつ、餓死したいのか?
 お前のような軟弱者にこそ、この言葉を授けよう。
 汝、虎穴に入れずんば、虎児を得ず!』

「こ、コケ…?な、なにそれ?
 「入れずんば」ってあたりが
 なんか微妙に間違っているような…
 ひょっとして、それも…まごこちゃん?」

『いや、えぇと…
 これは…なに子ちゃんだったかな?
 とにかく
 「どんなにたくましい虎だって
 お尻の穴にねじ込んでいるばかりじゃ
 虎児は授からないんだぜベイベー」
 っていう意味さ。』

「………いや。
 なんか、すっごく違うっぽいし。
 しかも、全然意味が通らないよ!」

『うるさい!要するにだ!
 それなりの成功を収めるためには
 少々の危険をかえりみるな!っていうことだ。』

「なんで結論だけあってんだよ!」

『うるさい!だまれ!これ以上しゃべるな!
 俺より目立つな!
 とにかく、あの子供を攻略すべく、突撃ぃ〜!
 えい、えい、おーぉぉぉぉ!!!!!』


というわけで、ようやくタナカさん宅へと突撃を敢行する
我らが勇者、キリスとギリス。
さっさと行けよ!さっさと!
………
大きな希望と小さな不安
そしてとっておきのまごこちゃんの兵法を胸に秘め
勇者達の戦いは、いよいよクライマックスへ…。

(おい、これ、本気でまだ続くのかよ!)

筆者の限界をそこはかとなく感じさせつつ
激動の次号へ…

絶対に期待せず、待て。









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